中脇初枝

 きのう作家中脇初枝の里帰り講演があった。四万十市民大学「わたしを育んでくれた幡多の昔話」。

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中脇初枝は1974生。中村高校在学中、「魚のように」で第2回坊っちゃん文学賞を受賞し(NHKドラマにもなった)、華々しくデビュー。しかし、その後、しばらく小説は書かなかった。筑波大学では民俗学を専攻し、世界の昔話などに関心を持った。卒業後も、もっぱら子供向けに絵本に童話を書いたり、昔話の語りをしたり、再話を出版したりしていた。だから、私は児童文学作家になったのだろうと思っていた。

ところが、2年前、久しぶりに書いた、児童虐待をテーマにした小説「きみはいい子」は第28回坪田譲治文学賞を受賞、2013年本屋大賞4位のベストセラーになった。続編「わたしをみつけて」も売れている。再び文壇から光を浴びている。世の中に純文学と児童文学を一緒に書く作家はめったにいない。「きみはいい子」は映画製作の話が進んでいる。

 その彼女の原点は、ふるさと幡多の昔話。7、8月、隣の黒潮町の上林暁文学館で特別展「わたしをみつけてー中脇初枝・文学の軌跡」が開かれた。その時の「対談」でも話していた。自分が昔話に興味をもったきっかけは、子どものころのテレビ「漫画日本昔ばなし」を見たことだが、その頃、幡多の国語の先生方が「幡多のむかし話」という本を出版してくれた。それを読んで、昔話はよその話ではなく、自分が住んでいるところにもある、世界につながっている話であるということを知った驚きと喜び。文学(文字)をもたない民族はいるが、昔話をもたない民族はいない。言葉、人、物語は一体のもの。

昔話は万国共通、千年の昔からある。人々が語り伝え生き抜いてきた。しかし、いま語り伝える人が少なくなり、消えかけている。それに対する危機感。

 私が市長在職中、彼女に「四万十市ふるさと応援団」に入ってもらった。そして、「広報四万十」(2012年2月)に寄稿を頼んだ。「幡多のこどもたちに幡多の昔話を」。幡多の昔話は、何世代にもわたって幡多弁で語り継がれてきたもの。彼女は、幡多弁をこよなく愛し、大切にしてくれている。今回の講演も幡多弁で語ってくれた。いま幡多に住むわれわれが、はっと思うような幡多弁で。

彼女は地元を離れた人間である。いま神奈川県に住んでいる。外からみるふるさとは、地元にずっといる人間にはみえないかたちをしている。郷愁、郷土愛のようなものは、だれでもが、もつものであろうが、幡多には特別のかたちがあるように思えてならない。

 私小説作家上林暁、シナリオライター中島丈博、児童文学作家横山充男、漫画家安倍夜郎・・・彼らも幡多に生まれ、幡多を離れた人間であるが、いまでも幡多にこだわり、幡多にとりつかれ、もがいている。
 中脇初枝もまぎれもない幡多人である。

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プロフィール

Author:田中全(ぜん)
高知県四万十市在住。
幡多と中村が自慢のおんちゃん。
幸徳秋水を顕彰する会事務局長。
FB(フェイスブック)もやっています。

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