椎の実

 今年のいちじょこさん(一條神社大祭、11月22~24日)は天気にも恵まれ、最近の中では、人出も多かったように思う。

しかし、私が子どものころの混みようは、こんなものではなかった。今年は人が出ているといっても一條神社周辺と、天神橋アーケードから一條通りまで並んでいる屋台だけであるが、昔は町全体が人であふれ、歩くのに苦労をした。

いろんな興業があった。毎年サーカスが来ていた。場所は、いまの市役所西側の竹葉のたこ焼き屋の一帯。アクロバットショーなどをドキドキして見た。また、市役所庭では相撲大会(高校、中学)をやっていた。太陽館や中劇の映画も満員だった。

 一條神社の参道階段下では、いつも傷痍軍人らしき人たちが、顔や手足に包帯を巻き、松葉づえに肩をかけ、哀愁をおびたアコーデオンを流し、援助を乞うていた。私は子どもごころに、その姿を見るのが気の毒というよりも怖くてたまらず、顔をそらして、早く前へ進みたいとあせるのだが、階段を登る人と降りる人が押し合いへしあいで、身動きがとれず、どうにもならなかった。

そんな時、いつも椎の実を炒った、あの香ばしいにおいがぷ~んと、鼻をついた。参道入り口や道端のあちこちで、椎の実を売っていた。

私は親からもらった小遣いで、いつも小さな袋を買った。10円か20円ぐらい。あつあつの椎の実を歯でパチッと噛んで、割れ目を大きくしてから、指で皮をはいで食べる。大人も子どもも、サーカスや相撲を見ながら、みんな食べていた。中村のまちじゅうに、椎の実のにおいが充満していた。

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太陽館や中劇では、みんな入口の売店で椎の実を買ってから入り、映画を観ながらパチッ、パチッとやっていた。満員で、立って食べている人も。席の下や通路の隅には、皮がたくさん落ちており、踏むとバリバリと音がしていた。

 椎の実そのものは、めずらしいものではなかった。八束小学校の裏山は天満宮になっており、大きな椎の木がたくさん生えていて、学校の帰りには木に登って、恐る恐る先端の枝を折ってから取る、そのスリルを楽しんでいた。実を包んでいるぶつぶつの袋(袴)から取り出し、少々青い実でも、そのまま食べた。

しかし、いちじょこさんで食べる椎の実は、いつもの椎の実ではない、特別なものだった。生ではなく、火で炒められていたこともあるが、何と言っても粒が大きかった。その椎の実は鹿児島県の奄美大島産だったと、その後聞いた。南の島の椎の実はとびきり大きかった。

今年のいちじょこさんでも、椎の実を売っていないかと探してみたがどこにもなかった。今年だけでなく、しばらく椎の実を見たことがない。 

 私にとって、椎の実を炒った、あのぷ~んと香ばしいにおいは、なつかしい「おまち中村」のにおいです。

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プロフィール

Author:田中全(ぜん)
高知県四万十市在住。
幡多と中村が自慢のおんちゃん。
幸徳秋水を顕彰する会事務局長。
FB(フェイスブック)もやっています。

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