八紘一宇と高知家

3月16日、自民党国会議員の三原じゅん子氏が国会質問の中で「八紘一宇」という言葉を使い、これを礼賛した。

「八紘一宇」とは、太平洋戦争当時、日本がさかんに使った言葉で、「世界は天皇の下の同じ家族」という意味。アジア周辺諸国への侵略を合法化する大義名分として使われたスローガン(思想、理念)のようなもの。

私は、たまたま車を運転中、ラジオの国会中継でこの言葉を聞いて、驚き、耳を疑った。まさか、戦後70年、軍国主義の亡霊のような言葉が、飛び出してくるとは。三原氏は、租税回避のための日本企業の海外移転に対して、日本は建国以来大切にしてきた「八紘一宇」の価値観を大切にしなければならないという趣旨の提言であったのだが、この言葉が歴史的にどのように使われてきたのか、知らないで言ったとすれば、無知と恥をさらけたものだが、タレント議員だけに、まだかわいらしい。

しかし、知ったうえで言ったとすれば、空恐ろしい。3月20日、国会答弁で安倍首相が自衛隊のことを「我が軍」と言ったのは、本音がポロリと出た、つまり、背広の下から鎧(よろい)が覗いたものであろうが(これはこれで大問題)、三原氏の八紘一宇発言は、堂々と持論を述べたものだけに、トンチンカンな時代錯誤発言ではすまされない。従軍慰安婦問題や、戦後70年首相談話がどうなるのか注目をされている最中であるだけに、である。

こうした発言が飛び出してくる背景には、与党絶対多数の国会運営へのおごり、慢心がある。憲法9条改正に向けて、自信を誇示しているとしか思えない。

 ところで、「八紘一宇」という言葉を聞いて、私は「高知家」について日頃から感じている違和感にピンポーンときた。

「高知家」とは、高知県が一昨年から取り組んでいる、プロモーション(キャンペーン活動)のこと。「高知県は一つの大家族ながやき」というキャッチコピーで、高知県民のあたたかい「おもてなし」、特産品等の「おすそわけ」を全面に出し、観光客や移住者を積極的に呼び込もうという作戦である。高知県民は一つの大家族であり、県民総ぐるみで県外の人たちに対しても同じ家族のように、あたたかく迎えようというものである。

鉱工業生産高全国最下位、人口も下から3番目の高知県にとって、観光や移住促進に力をいれるのは私も大賛成である。いごっそう、ハチキン、酒に強く、開放的で友好的という県民性も定着したイメージとなっている。私は全国を転勤してきたから、自信をもって、その通りと思うし、私はこれを誇りに思っている。

しかし、そのことがなぜ、「高知家」につながるのか、私にはしっくり来ない。行政の枠組みで言えば、確かに一つの同じ県ではある。しかし、高知県は、人口は少ないが、面積は四国で一番広い。海岸線は室戸岬から足摺岬まで弓のように長い。そびえ立つ急峻な山々もある。四万十川、仁淀川、物部川の三大河川はそれぞれ特徴がある。それだけに、地域ごとに、言葉や食べ物から人間の気質まで微妙に違う。特に、私が住んでいる幡多地方の言葉(幡多弁)は、いわゆる土佐弁とはイントネーションがまるで違う。幡多では「高知家は一つの大家族ながやき」とは誰も言わない。「・・・大家族やけん」と言う。

要するに、県内各地は文化、歴史等がそれぞれ異なる。だから、高知県は、安芸家、本山家、須崎家、佐川家、中村家、宿毛家・・・などの集合体と言える。それぞれの家には独特の家風や伝統などがある。

県という枠組みの中で、もろもろの統一的な施策を行なうべきことは当然であり、観光や移住促進においては特にそうである。その際、高知県の特色などをPRポイントに出すことは有効であることに異論はない。

しかし、「高知家」と言うのならば、「愛媛家」や「徳島家」だってあり、全国どこでも「○○家」はある。高知県だけの専売特許ではない。

それと、「家」という言葉にはいろんな意味や響きがある。確かに、同じ家族として包み込む、あったかイメージをもつ人もいるだろう。しかし、いわゆる家制度、つまり封建的な家父長制をイメージする人もいるだろう。私にはこのイメージのほうが強い。家制度では、家長がその家の代表であり絶対的な権威をもつ。茶道や華道の家元制度も同類である。その究極の例が「八紘一宇」であり、天皇が家長とされ、世界に君臨する思想である。「高知家」の家長はだれであろうか?

「八紘一宇」と「高知家」に共通するのは、「下から」ではなく「上から」の発想であるということ。各地域や人々の特色や個性を尊重するというよりも、それらを統一的に把握したいというトップダウン的な考え方のように思える。

このように「家」という言葉には多様な響きがあり、それに伴いいろんな価値判断が入る。そのような「難解な」言葉は、県の統一キャンペーンとして使う言葉としては、ふさわしくないと思う。

「うどん県」(香川県)、「おんせん県」(大分県)、「晴れの国」(岡山県)のような例ならば、シンプルで誰でも共通のイメージをもつ。こんなキャッチコピーのほうがいいのではないだろうか。

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プロフィール

Author:田中全(ぜん)
高知県四万十市在住。
幡多と中村が自慢のおんちゃん。

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