世界の果てのこどもたち

地元出身作家 中脇初枝が新作小説『世界の果てのこどもたち』を出版し、送られてきたので、さっそく読んだ。(講談社、381ページ、1600円)

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「わたしたちが出会ったとき、わたしたちの国は戦争をしていた。珠子、茉莉、美子。戦時中の満州で出会った、三人の物語」と、本のラベルにある。

中脇初枝は、中村高校在学中、「魚のように」で、「坊っちゃん文学賞」大賞を受賞したが、筑波大学では民俗学を専攻したこともあり、以後は、ふるさと幡多地方の昔話を発掘して紹介するなど、もっぱら子供向けの作品を書いてきた。

しかし、最近は純文学も書き始め、3年前、子供の虐待をテーマにした『きみはいい子』で坪田譲治文学賞受賞、本屋大賞4位となり、続編『わたしをみつけて』も山本周五郎賞の候補となった。『きみはいい子』は、映画(監督・呉美保)になり、あす、封切られる。いま、売れっ子の作家である。

『世界のはてのこどもたち』は、題材をふるさとに求めたことでは昔話と同じだが、現代につながる戦争と平和という「重い」テーマに挑んだことで、中脇文学の新境地を開くものである。

高知県幡多地方は、太平洋戦争中、多くの満州開拓団を大陸に送りこんだ。分村移民といって、村を分割して、村単位で満州に渡った。江川崎村(のち、西土佐村→四万十市)は、昭和17~19年、118戸、429人を送ったが、敗戦後の引き揚げのさい、約7割が、襲撃、飢え、病気などで死亡した。『世界のはてのこどもたち』は、この江川崎村開拓団の記録をベースにしている。

同開拓団の生き残りの人たちは、いまは少なくなった。しかし、1984年以降、これまで8回、中国吉林省奥地の入植地跡(日本語地名「大清溝」)に慰霊訪問を繰り返している。私は5年前の6次訪問に同行した。中脇初枝は直近昨年5月の8次訪問に取材同行したほか、単独で中国各方面の取材に4回行った。

小説の主人公は開拓団員の少女。それに、開拓団のそばにいた朝鮮人の少女。さらに、開拓団を一時訪ねてきた横浜の少女。この3人は、それぞれ別に敗戦を迎え、別に戦後を生き抜く。中国残留孤児、在日朝鮮人、横浜空襲孤児として。しかし、こどものころの友情が天に通じ、40年後再会する。

「軍事力や戦力よりも、子供たちの友情が平和の天使として強いことをこの本から学んだ」と、作家森村誠一は評している。

おととい、中脇初枝が里帰りしていた。元開拓団員に取材等で協力してもらったお礼と、本ができあがった報告とで。旧権谷小学校跡(せせらぎ交流館)にある「分村資料室」を、このほど元開拓団員の武田邦徳さんらのご尽力で拡充したので、ここに関係者が集まり、交流会を行なった。私も中脇初枝に、今回いくつかの手持ち資料を提供したこともあって、同席した。

私は中脇に、どんなきっかけで今回のテーマを思いついたのか、きいてみた。彼女は、子供のころ(中村時代)、近所に在日朝鮮人がいて、親切にしてくれたことや、黄砂が中国大陸から飛んできているのだと聞いて驚いたこと、をあげた。また、昔話は万国共通であり、国境がないこと。世界のこどもたちは地球のどこにいてもつながっている。

いつも子供を主人公にするのは、なぜ? とも聞いた。大人にはみんな子供のころがあった。だから子供と大人は同じ、との答え。

日本が再び戦争をする国へと進んで行きそうな岐路にあるいまだからこそ、多くの人に読んでもらいたい本だと思う。

幡多弁(土佐弁ではない)をこよなく愛する彼女。
地元のわれわれ以上に「流暢な」幡多弁だ。

新境地を開いた彼女が、これからどういう飛び方をするのか、注目したい。

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ブログ 「中脇初枝」 http://hatanakamura.blog.fc2.com/blog-entry-103.html
ブログ 「満州大清溝」http://hatanakamura.blog.fc2.com/blog-entry-146.html

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先日はありがとうございました。交流会残りたかったがですが諸般の事情で先に失礼いたしました。あの交流会参加できない人 裏で支えている人がおることも知って欲しかったです。次の何かのおりには宜しくお願いいたします。
プロフィール

Author:田中全(ぜん)
高知県四万十市在住。
幡多と中村が自慢のおんちゃん。
幸徳秋水を顕彰する会事務局長。
FB(フェイスブック)もやっています。

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