夢と現実のはざまで― 「遅咲きのヒマワリ」から1年

去年のいまごろ、地元はみんな夢見心地だった。
テレビドラマ「遅咲きのヒマワリ」(10回シリーズ)の放送が始まったからだ。

 去年の5月、突然、四万十川を舞台にしたドラマをつくりたいという話が飛び込んできて、半信半疑の中、話がバタバタと進み、9月からロケ開始、10月末から放送が始まった。

 ドラマの影響、効果というものはすごいもので、放送中からここへの訪問者や観光客が増えはじめ、放送終了後の年末年始から5月のゴールデンウイークにかけては、佐田沈下橋は満員御礼という状態だった。

その後も余波は続いている。7月からスタートした観光キャンペーン「はた博」の入り込みは、ずっと好調である。四万十川の知名度は「最後の清流」としてこれまでも高かったが、ドラマを機にさらにグレイドをアップさせたといえるだろう。いまや、高知県を代表する観光スポットは、はりまや橋や桂浜ではなく、四万十川であると、自負をしている。

ところで、このドラマを通して、ロケの拠点になった「中村」の知名度はどれだけ高まったのだろうか。
地元や高知県、また以前から中村や中村市を知っている者は、このドラマの主な舞台が中村であることは、当然にわかる。しかし、大部分の視聴者は、四万十川のそばの町だと思うだけであろう。

現に、ドラマのセリフの中で「中村」が出てきたのは、たった1回である。それも、主役丈太郎(生田斗真)の友人、順一(桐谷健太)が高知市の公園で酔っぱらって歌った「中村音頭」の中の歌詞としてだ。こんなのは、普通はセリフとは言わないだろうが。また、映像としても、ドラマの最初と最後に中村駅が出てきて、中村の字が見えたぐらいだ。

テレビ局としては、この町の正確な名前はどうでもいいのである。天神橋商店街が「四万十の新宿」として紹介をされたように、この町は「四万十」なのだ。
そんな町はどこにも存在しないのに。

しかしながら、このドラマは中村という現実の町があったからこそできたドラマである。四万十川を舞台にしたドラマなら、川の上流や中流を舞台とすることもできたはずである。なのに、なぜ下流が選ばれたのか。それは、中村があったからである。

このドラマ制作を企画したフジテレビの成河広明プロデューサーから、直接聞いた話である。― 地方(田舎)を舞台に、ロスジェネ世代(30歳前後)の群像劇をつくろうと思ったが、舞台を四万十川に決めたのは、「最後の清流」とあわせて中村という、地方都市のイメージにぴったりの町があったからだ。大きくもなく、かといってそう小さくもない。しかも小京都としての歴史と風格がある、町らしい町。現代の若者にリアリティーをもたせるためには、「自然」だけでなく「町」が不可欠であった。
野球少年だった成河氏(現在43歳)が野球を始めたころ、甲子園で中村高校「二十四の瞳」が準優勝をした。中村とはどんな町だろうと、ずっと想像を巡らせていたという。

ドラマのテーマとしても、いまの幡多や中村にピッタリだった。過疎や高齢化が進む地方を応援するため、都会から青年が地域おこし協力隊としてやってくるというストーリー。実際、四万十市は、昨年度3名の地域おこし協力隊を採用したばかりであった。
また、四万十市民病院(ドラマでは四万十中央市民病院)は、ずっと医師不足で困っている。そこに地元出身の医師がUターンで帰ってくるという設定は、昨年その事実があった直後であった。
さらに、かつては「おまち」として栄えた中村の中心商店街は、いまは見る影もなくなっており、その復活に向けた取り組みにみんなが知恵と汗を絞っている。

四万十市が行政として取り組んでいること、そのままのドラマであった。

ドラマは、主人公がいよいよここに永住する決意を固め、耕作放棄地の復活に取り組むというところで終る。
フジテレビとしては、続編を視野に入れた企画のようであり、地元としても続編要望署名をたくさん集めたが、全国的には視聴率が期待をしたほどではなかったこともあり、いまのところ続編制作は不透明ときいている。

1年たったいまでも、私は夢見心地である。
現実と夢のはざまで揺れ動いている。
「中村」が現実なら、「四万十」は夢だ。
両者のギャップは、このまま無限大にひろがっていくのだろうか。

DSCN2314.jpg    きみに会いたいフェス       DSCN2324.jpg 

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プロフィール

Author:田中全(ぜん)
高知県四万十市在住。
幡多と中村が自慢のおんちゃん。
幸徳秋水を顕彰する会事務局長。
FB(フェイスブック)もやっています。

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