尾﨑知事の 「約束」

 高知県では11月15日投票で知事選挙と高知市長選挙が行われる。いまの情勢では、知事選挙は尾﨑知事の無投票(2回連続)、高知市長選挙は現職と新人の一騎打ちとなる公算大である。

こうした中、昨夜、高知市内で岡崎誠也高知市長(現職)陣営の決起大会がおこなわれた。この席において、尾崎知事がビデオで「県勢浮揚に向けたかけがえのないパートナー」との応援メッセージを送ったと、今朝の高知新聞で報道されている。

尾﨑知事のこの行為は県民に対する「約束」に反する。
理由はこうである。

 2013年4月の四万十市長選挙は現職(私)と新人の一騎打ちとなった。この選挙に対して尾崎知事は新人を全面的に応援した。パンフやリーフレットに写真を載せるだけではなく、選挙目的が明らかな新人側の事前の集会にもたびたび公務出席。4月8日の総決起大会では壇上からマイクを握り、声高く新人への投票を呼び掛けた。

しかし、尾﨑知事が訴えたのは「現状では県市の連携が十分とは言えないので、より連携がとれる市長を選んでほしい」「信頼のおけるパートナーを選んでほしい」ということだけで、具体的根拠等はいっさい出さなかった。

こうした知事の言動に対し、知事は県内選挙においては本来中立であるべきなのに、理由もなく一方に肩入れするのはおかしいとの、疑問や批判が多く出た。新聞投書も。

こうした声に対し、選挙直後、4月30日の定例記者会見で、知事は「政治家として主張したかった」、今後は「基本的に中立を貫きたい」、「特定候補の応援は原則しない」と答えた。

また、6月19日、県議会一般質問に対しても、同様に答え、四万十市長選挙は異例の対応であったことを強調した。

これらの知事の発言は県民に対する「約束」であったはずある。

 私は思う。知事も政治家(もちろん市町村長も)である以上、自分自身の政治的考えやポリシーを持つことは当然であり、どんどん発言すべきだ。それが政治家としての責任である。しかし、自分以外の選挙に対してのかかわりは極力抑制すべきである。

というのも首長は一つの自治体の最高権限者、最終責任者である。それぞれの自治体の住民にはいろんな政治的立場の人がいる中で、それらの多様な住民を包摂する代表者が首長であるからである。そこらが議員とは異なる。

地方自治法でいえば、都道府県と市町村、どちらも独立した自治体である。都道府県は、市町村の連合体のような性格をもってはいるが、かといって上下関係にあるのではない。対等平等である。逆に、地方自治の基本単位(基礎自治体)という意味でいえば、市町村のほうがより住民に密着した重要な役割を果たしている。

だから、よほどの理由がないかぎり、ある市町村長がよその首長選挙に干渉、介入することはないし、この関係は、都道府県と市町村においても同様である。

しかし、よほどの理由があれば別である。たとえば、いまの沖縄である。辺野古に新しい基地をつくらせるかどうかは、名護市や宜野湾市だけの問題ではない。広く沖縄県民(国民にも)に共通するきわめて重要な問題である。こうした問題が争点になる首長選挙であれば、知事がかかわることはむしろ当然である。争点が県政に直結したものであるからである。

同じような問題が高知県でも過去にあった。東洋町長が核廃棄物処理施設の誘致に動いたことから、これが争点になった町長選挙があった。その時、橋本大二郎知事(当時)は、これは県民全体に影響を及ぼす問題であり、かつ県の方針(核施設は受け入れない)に反することから、新人候補(核受け入れ拒否)を応援した。

では、2年前の四万十市長選挙の場合、そんな「よほどの理由」があったのか。当事者の私にはまったく思いつかないことであったが、何かあればぜひ聞かせてほしかった。しかし、尾﨑知事はその具体例理由を何も言わなかった。ただ、「連携が不十分」と言うだけ。演説でも、記者会見、議会答弁でも、それだけ。

こんな無責任な態度はない。
何も言わない(言えない)以上、私は推測する。特定の党派の意向を受けた言動であったと。それが「政治家として主張したかったこと」なのだと。

このことで知事はさらに県民の不信を買ったと思う。というのは、尾﨑知事は全党派の実質的支持を受けているからである。尾﨑知事は最初こそ選挙を争ったけれど、2回目の選挙は無投票で、さらに今回も無投票が確定的である。

それだけ人気が高く、支持が厚いのも当然。就任以来、「過疎高齢化の先進県」の生き残りのために、県下の実情にそった産業振興計画等をたて、着実に実行に移している。若くてエネルギッシュな行動力も頼もしい。

官僚(財務省)出身ということもあってだろう、安倍政権の基幹政策(安保法案、原発等)に対しては無批判であるという矛盾をかかえこんではいるが、各党派が対立候補を立てないということは、少なくとも県政課題に対してはしっかり向き合ってくれているという高い評価があるためである。私も同じ評価である。

そうであるならば、知事が心がけねばならないことは、特定の党派の意向に左右されることなく、「県民党」の立場で行動することである。市町村の首長選挙には介入しないことである。

今回の高知市長選挙の場合、介入しなければならない「よほどの理由」があったのだろうか。そんな争点はないはずである。それとも、直接マイクを握るのではなく、ビデオだからいいだろうと思ったのだろうか。

 私が最後にもう一度強調したいのは、県と市町村は対等平等、独立の関係にあるということ。県の政策があれば、一方的に押し付けるのではなく、議論をすべきだということである。市町村は県の出先機関ではないのだから。

プロフィール

Author:田中全(ぜん)
高知県四万十市在住。
幡多と中村が自慢のおんちゃん。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR