ふるさと納税

  最近の「ふるさと納税」の過熱ぶりには、釈然としないものを感じる。当初の理念とはかけ離れているし、続けるのなら政府公認の「お得な節税対策」、あるいは「全国特産品斡旋制度」などと、名前を変えたらいいのではないか。

 この制度は2008年度から始まった。それまでも都会に住む地方出身者などで、ふるさとのために役立ててほしいと寄付をする者は多くいた。その寄付を幅広く行いやすくするために、その人の納税額の一部を居住地からふるさとにシフトさせる制度である。つまり、人々の「善意」を促したものである。

私が市長になった2009年あたりは、まだ「ふるさと納税」は、ほんのわずかだった。しかし、そのほとんどが10万、50万、100万などと高額な方ばかりだった。どなたも寄付という感覚だったと思う。

善意とはいえ、そんな高額な寄付をもらいっぱなしでは申し訳ないと思い、心ばかりのお礼の印として、個別対応として地元特産品を贈ることにした。それでも、そのことにより寄付が多く集まった訳ではなかった。

そのうちに、他県の一部では、1万円以上寄付した方にお礼の品を送ることを制度化して寄付をふやしているところがあるという情報をえたので、それではうちは5千円以上で制度化してみようということにした。お礼は寄付額の半額相当の特産品を贈ることとした。

当時は、このような例はまだ少なかったので、四万十市がネットサイトで紹介されたこともあり、急に寄付が増え始めた。担当者はお礼の品の発送などの事務処理にテンテコ舞いになった。

市では、その直前に「四万十市ふるさと応援団制度」をつくっていた。地元出身者など四万十市に縁のある方に呼びかけ、いろんな形でふるさとを応援してほしいというもので、会費無料、登録をしてくださった方には、ネットで四万十市の情報を定期的に届けるというものであった。四万十市ファンクラブと同じようなものであった。

四万十川ウルトラマラソンや水泳マラソン参加者などにも呼びかけ、結構多くの人が入団してくれ、順調に団員が増えていた。

それならば、ふるさと納税をしてくれる方々もきっと入団をしてくれるだろうと思い、登録申し込み用紙を送った。ネットでも受け付けた。

しかし、予想は裏切られた。反応はほとんどなかった。意外であった。
そうした人たちのほとんどは、「お礼の品 狙い」であった。

それでも半額は寄付になるので、本人にとっては持ち出しになるのではないかと思ったが違った。そうした人たちは制度の詳細を知っていた。

所得や家族構成にもよるけれど、当時は自己負担4千円(現在は2千円まで減額)を超える額については、税金控除で戻ってくる仕組みであった。

そうした人たちは、ほとんどが1万円の寄付であり、全国他の市町村にも寄付をしていることがわかった。たとえば5口(5万円)で寄付を分けると、5千円の5倍の2万5千円のいろんな品が各地からもらえる。それでいて自己負担は4千円だけ。差し引き2万1千円のお得になる。

その後、全国の市町村でもこのことに気がついて、返礼品ラッシュが始まった。だから、いまの四万十市は目立たなくなってしまっている。

この制度のポイント。得をする人の順に・・・

1、 納税者。返礼品を「ただで」たくさんもらえる。

2、 特産品の生産・出荷者。
地元市町村がまとまった量を買い上げてくれることになる。

3、 納税してもらう自治体。半額は残るので。
しかし、職員は事務対応に追われ、臨時雇用を入れているところもあるので、こうしたコストを差し引けば、騒がれているほど多くは残らない。

一方、損をするのは、納税者が現に住んでいる自治体と国。
本来入るべき税金(市県民税=自治体、所得税=国)が入らないので。

納税を受ける自治体にしても、他の自治体に納税をする住民もいるし、その逆もあるので、それぞれ差し引かねばならない。しかし、自治体全体(ネット)でいえば税収減になる。また、国も間違いなく税収が減る。要は、国民の税金負担で、税に詳しい一部の人だけに恩恵を与えているということになる。言わば、税金のばらまき。

この制度は、本来「善意」の寄付であったものが、現状では、「国公認の節税(脱税)制度」、あるいは「全国特産品斡旋制度」になっている。

制度のこのような変容は国も想定外であったので、ひところは返礼品偏重を抑えるよう指導をしていたが、いまでは逆に制度をさらにひろげるなどして(負担額の軽減等)、「地方創生」のイメージアップ戦略に利用(悪用)している。

「羊頭狗肉」という言葉がある。
だから、釈然としない。

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田中全(ぜん)

Author:田中全(ぜん)
四万十市在住。
幡多と中村が自慢のおんちゃんです。

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