小鹿田(おんた)

 今月18日から22日まで、九州北部のやきものの里を訪ねてきた。
  大分県の小鹿田(おんた)、福岡県の小石原、上野(あがの)、高取、佐賀県の唐津だ。

 私は農林中央金庫勤務時代、大分と福岡で仕事をしたことがあるので、前回の記事に書いたように、これらの窯場には何度も足を運んでいるが、仕事もフリーになったので、久しぶりに「思い出さがし」に出かけた。
九州には、有田、伊万里など、ほかにもたくさんの窯場があるが、今回は自分好みの里を辿って、本命の唐津に向かった。

 宿毛からフェリーで佐伯に渡り、最初に日田の皿山、小鹿田に着いた。6度目の訪問だが17年ぶりだ。
小鹿田は江戸時代から続く窯場で、柳宗悦やバーナードリーチなどによって発掘・評価された、いわゆる民芸運動の原点のような存在として有名になった。日田の中心部から車で小1時間かかる。隠れ里のような谷あいで、窯元が肩を寄せ合って、伝統技法を守り、火を焚き続けている。つくられるものは日常雑器であり、その素朴な味ゆえに支持をえて、近年ファンが着実に増えている。

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 今回は、はじめてここの民宿(山のそば茶屋)に泊まったので、いろんな話も聞けた。ゆっくりと里の雰囲気を体感する中で、これまでとは違い、やきものの里としてだけでなく、中山間地集落のあり方についても考えさせられることが多くあった。

 今回知ったのだが、小鹿田といっても地区は二つに分かれている。やきのもの里は皿山地区で、全14戸のうち10戸が窯元である。黒木(小袋)、坂本、柳瀬、どれも江戸時代から続く窯で、親が子に伝える、一子相伝だ。

いま全国の中山間地は、過疎高齢化が進む中で「限界集落」という、いやな言葉があるように、集落の維持がむずかしくなっているところが多い。しかし、ここでは、どの窯元にもしっかりと後継者がいる。ロクロを回すのは男の仕事だが、その下ごしらえの土づくりは主に女の仕事。近くの山から原土を掘ってきて、谷川の水を利用した唐臼(からうす)で細かく砕いてから、何回も水で濾過する。杉の産地、日田であるから、火を焚くマキはたくさん出る。製材所から切れ端を集めて来る。ほとんどが3世代の家族労働だ。小さな子供が多いのには驚いた。

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 かつては半農半陶の生活で、どこにでもある寂しい山里の風景であったが、民芸運動のシンボルとなる中で、平成7年には国の重要無形文化財に指定された。やきのもファンだけでなく、日本の原風景のような、静かな山里のたたずまいにあこがれて訪ねて来る人も多い。

 平成20年には重要文化的景観にも指定をされた。文化的景観とは、自然・風土の中で人の暮らしを通じて形づくられた風景のこと。つまり、風景が文化財になるという、文化財の新しい概念である。現在、文化庁によって全国の35地区が指定をされているが、小鹿田の指定は5番目、九州で最初であった。

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 小鹿田の指定は、最初は皿山地区だけであったが、その後、もう一つの池ノ鶴地区も追加指定を受けた。私は今回、はじめて皿山のさらに上流にある、この池ノ鶴地区にも足を運んだ。わずか3戸の農家が急峻な棚田を守っていた。小鹿田がこのように奥行きの深い谷とは知らなかった。

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 皿山地区は、いまの日本の中山間地集落としては希有な存在である。元気があり、勢いがある。集落としての世代継続が円滑、順調に行なわれている。理由は、やきのもという、しっかりとした生業があるからだ。地元でとれる土と木、そして水が原材料だ。また、土掘りや窯焚は共同作業でおこなうなど、お互いの支え合いのシステムができている。

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 これからの日本で、中山間地の集落機能を維持していくことのカギの一つは、その地域において自力で収入をえる「小さな経済」をつくっていくことだ。地元でとれる農産物、林産物などを活用し、付加価値の付いた特産品等をつくることである。皿山は多くの幸運に恵まれた例ではあるが、そのモデルである。

 なお、重要文化的景観については、小鹿田のあと四万十川流域(5市町、5地区)も指定を受けた。先月、本市で全国文化的景観地区連絡協議会四万十大会を開き、各地から関係者が集まり、経験交流と勉強会を行なった。日田市長もみえていた。来年は、この大会を日田市で開くことになっている。

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Author:田中全(ぜん)
高知県四万十市(旧中村市)在住。
幡多と中村が自慢のおんちゃん。

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