首長の責務 ― 特定秘密保護法案への態度

今朝(11月27日)の高知新聞を読んで驚いた。
 きのう衆議院で強行採決された特定秘密保護法案への賛否を問う、県下首長(市町村長34人)アンケート結果が載っていた。

 反対・慎重意見が多いのは当然であると思うが、意外だったのが、態度保留も多いことと、地元・四万十市長が賛成していることである。

 34人の回答一覧表は掲載されていないので詳細はわからないが、解説記事を読む限りでは、同法案そのものへの賛成は「賛成」2、「どちらかといえば賛成」5の計7人である。このうち後者の5人は、今国会での成立には議論不足等から反対しているので、今国会成立に賛成は2人だけ。

 一方、同法案の今国会での成立への反対は14人(うち5人は、法案そのものにも反対)。

残る18人は、「情報が少なく、現時点では判断できない」等として「どちらともいえない」が13人、「国会審議中」等として回答辞退が5人である。

 この種のアンケートは私が市長在職中にも、原発政策への態度等、たびたびあった。いずれも国政がらみの重要な問題であったが、だからこそ一番身近なところで住民の命と自治をあずかる首長の責任として、自分の態度をあいまいにせず、なるべく明確に回答をしてきたつもりだ。もしいまも私が市長であったならば、躊躇なく同法案そのものに「反対」する。
 
なのに、このアンケートでは態度留保が過半と異常である。その理由が記事にもあるように、本当に情報不足等にあるとすれば、それは首長としての責任放棄であり、情けない。もっと情報を集め、勉強しろと言いたい。

 しかし、日頃からよく知っている、こうした首長の名誉のために言えば、この異常さこそ、この法案の異常さ(本質)なのである。自由にモノが言えなくなっているのだ。多くの国民やマスコミ、ジャーナリストが反対をしているこの法案の問題点については、首長ならみんなわかっている。しかし、いまの巨大与党の力で同法案の成立が見通されているなかでは、あえて旗色鮮明にすることによる、あとの禍(わざわい)を恐れているのである。現在、県下選出国会議員6人のうち与党が5人、しかもこの法案対策責任者(衆院国家安全保障特別委員会与党筆頭理事)は地元中谷元自民党代議士である。

 高知新聞の隣の社会面で高知大学の小幡尚准教授(近代日本の治安維持法制が専門)が言っている。「国会のネット中継を見ていて、この世の終わりという感じがした・・・」「法律は必ず拡大解釈される。権力を甘く見てはいけない。息苦しい社会になる」。この息苦しさが、アンケート結果から伝わってくる。

 同法案の今国会成立に賛成した2人のうちの1人、中平正宏・四万十市長のコメントも載っている。
「安全保障に著しく影響があり、国益を損なう心配のある情報は秘密にすべきだ。」

 「国益」とは何だろうか? 最近、盛んに使われている。戦前には「国体」という言葉があった。ポツダム宣言で日本は無条件降伏をしたと言われているが、実際は「国体の護持」だけは譲らないまま、8月15日を迎えた。「国体」にこだわったため、戦争の終結が遅れたのである。

「国体」とは「国の体制」であり、天皇を頂点とする意思決定システムのことである。

「国体」は決して「国民」のことではなかった。「国体」のために、どれだけ多くの「国民」が犠牲になったことか。歴史をみれば明らかである。

「国益」も「国体」と同じである。
この法案は、ベールをはがせば、基本思想は戦前の治安維持法につながる国民監視の治安法案なのである。また、地方自治の理念にも反し、国がすべてを決めていくシステムになってしまう。
二度と同じ過ちを繰り返してはならない。

四万十市はもとの中村市である。大逆事件で処刑された、中村生まれの幸徳秋水は、「国体」の犠牲者のシンボルである。中村市議会は2000年12月、「幸徳秋水を顕彰する決議」を、全会一致で採択している。画期的な決議であった。

 「幸徳秋水はこの90余年の間、いわゆる大逆事件の首謀者として暗い影を負い続けてきたが、幸徳秋水を始めとする関係者に対し、20世紀最後の年に当たり、我々の義務として正しい理解によってこれを評価し、名誉の回復を諮るべきである。よって中村市議会は郷土の先覚者である幸徳秋水の偉業を讃え顕彰することを決議する。」

 今回の四万十市長の態度や発言の意味するところは重大である。
 われわれは、もっと郷土の歴史に誇りをもち、真剣に学ばなければならない。それが日本の歴史を学び、先人たちへの責任を果たしていくことにつながるのだと思う。

これからでも遅くはない。
国民の良識を示すことによって、特定秘密保護法案が廃案、または少なくとももっと議論が深まるまで、継続審議になることを願っている。

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プロフィール

Author:田中全(ぜん)
高知県四万十市(旧中村市)在住。
幡多と中村が自慢のおんちゃん。

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