四国遍路

 農林中央金庫勤務時代の上司から1冊の本が届いた。篠塚勝夫「古希の歩き遍路千二百キロ 同行二人とお接待の四八日間」(138ページ)。

元上司は、昨年3月16日~5月2日、48日間をかけて四国八十八カ所霊場を歩いて一気に回られた。「通し打ち」と言う。その体験を日記風にまとめられたものである。

昨年4月5日、突然電話がかかってきて、いま黒潮町を歩いておられるとのこと。驚いた。「発心の道場」阿波をスタートし、「修行の道場」土佐もいよいよ終盤の三十八番足摺金剛福寺をめざしているところであった。

元上司は仕事の厳しさで勇名をとどろかせた方で、周りからも畏怖されていた。何事にも鈍感な私は、みっちりとしごいてもらった。そんな私であったが、不思議にも、私が地元に帰ってきてからも時々電話が入り、様子をきいくれていた。

とは言っても、私にとっては怖い上司。ドキドキしながら翌6日昼、四万十大橋のたもとで待っていると、向こうから、白装束に箕笠をかぶり、杖を両手にしたお遍路さんがニコニコしながら近づいて来た。約10年ぶりの再会。ごく自然に手を握りあった。

さっそく「ご接待」をと、歩きは半日休んでもらって、天然鰻をご賞味いただき、沈下橋や一條神社など市内各所をご案内したあと、わが家にお泊りいただいた。

元上司は、その力量を買われ、農林中金のあとも瀕死の雪印再建で重責を務められた方である。その後どうされているかと思っていたら、完全リタイアー後は、もっぱら千葉県居住地の地域活動などに従事され、東北震災復興ボランティアにも何度も出かけているとのこと。そんな中、四国巡礼を思い立ったそうだ。しかし、その夜は、職場時代の思い出話にはずみ、心中の多くは語られなかった。

今回の本に、その胸の内が綴られていた。人生七十年といえば「古希」と言われるように、かつては人生の終末を意味していた。

本は旅日記であり、道すがらの出会いや出来事を中心に書いているが、ページの合間合間に、生い立ちから今に至るまでを振り返っている。人生の蹉跌、悩みや苦しみ、幸運・・・家庭の内情など、これまで知らなかった人の姿がそこにはあった。

私の家の前の四万十川堤防をお遍路がいつも通っている。お遍路の姿は、私にとって水や空気のようなものであった。

しかし、今回、あの元上司がお遍路姿で突如現れたことにより、当たり前の風景がそうではなくなった。巡礼を身近な自分の問題として考えるようになった。

 人生の総括、これまでの総括・・・次へのステップのためにはそれが必要であると思う。

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Author:田中全(ぜん)
高知県四万十市在住。
幡多と中村が自慢のおんちゃん。

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