木戸明没後100年

 きょう9月13日は、幕末維新期、中村が生んだ儒学者、木戸明(きどめい、1834~1916)没後100年にあたる。

木戸明は、幸徳秋水幼き頃の師である。そこで、9月5日、幸徳秋水を顕彰する会と四万十市教育委員会では、木戸明墓(市内正福寺)に、以下のような解説板を建てた。新聞でも報道された。

  木戸明(1834~1916)

  儒学者。通称駒次郎、号鶴洲。18歳で京の巌垣月洲に入門し国学経書を学ぶ。帰国後勤王倒幕に参加。海防のための大砲を製造。維新後は遊焉義塾を開き地元教育に専念。幸徳秋水、吉松茂太郎、安岡雄吉・秀夫兄弟ら門弟多数。中村中学、高知中学でも教え、高知の教え子に濱口雄幸、野村茂久馬らがいる。書や漢詩に堪能で詠詩、揮毫も多い。
         
  2016.9.13
  没後100年記念事業
  幸徳秋水を顕彰する会 
  四万十市教育委員会
 
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 また、9月11日、木戸明ひ孫の木戸秀雄氏を講師に、「木戸明没後100年記念講演会 ― 教育者木戸明の生涯 ―」を開いた。中央公民館の会場には、木戸家所蔵の木戸明書(漢詩)や写真、師の巌垣月洲、親交のあった間崎滄浪や梁川星巌らの書(掛け軸)も同時展示され、市民など約90名が集まった。

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明は地元の先輩、樋口真吉や安岡良亮らの影響を受け、尊王攘夷、海防のために、地元で大砲をつくり藩に提供したりしているが、戊辰東征などには従軍しておらず、「派手な」記録は残っていない。

木戸明は学問の人であり、その最大の功績は教育者として地元教育に専念したことである。明は京へ3度往復しているが、維新後は、地元に残り、中村大神宮横の自宅に「遊焉(ゆうえん)義塾」を開いた。

幸徳秋水は9歳の時からこの塾に入り学んだ。最初に「孝経」の素読から、次に「三国志」「唐詩選」へ。東洋的儒学思想を学ぶ。秋水はずばぬけて秀才だった。のちの秋水の格調高き漢文体の文章は、ここに淵源がある。

塾生には、安岡雄吉・秀夫兄弟(良亮息子)、吉松茂太郎(海軍大将)、仁尾惟茂(初代専売局長官、貴族院議員)らもいる。

また、木戸明は、中村中学、高知中学(ともに旧制)でも教壇に立ち、高知時代の教え子に、後の首相の濱口雄幸のほか、野村茂久馬(土佐の交通王)、由比質(旧制松山高校初代校長)らがいる。

木戸明没後3年(大正8年)、中村小学校校門前に木戸明銅像が建てられたさい、濱口雄幸が資金提供を申し出た手紙(写し)も展示されていた。銅像は太平洋戦時下、銅材提供の犠牲になった。

濱口は師に毎年、年賀状を書いたという。偉くなる人はマメである。仁尾、由比の年賀状と一緒に、残っている。

教育一筋50年。私塾や学校を通して、教えを受けた師弟は3千人に及ぶと言われている。

秋水は自由民権から最終的に社会主義に至る。その最初の本、「社会主義神髄」を明治36年(1903)出版したさいに、木戸明に贈った葉書が残されている。(市立図書館「秋水資料室」に寄託)

しかし、ゴリゴリの儒学者の木戸明には秋水の新しい思想を理解することは、到底できなかった。

明治39年(1906)秋水が静養のため帰郷したさい、秋水の行く末を心配した木戸明が訪ねてきて、社会主義をやめるようにすすめる。秋水は必死で師を説得しようとしたが、結局物別れに終わる。秋水は寂しさをこらえきれないような顔をして、師を玄関から送った。

そんな秋水を見て、母多治は、「木戸先生は普通の年寄りぢやもの、わたしは傳次の味方ぢやけん!」と言った。母は秋水の理解者であった。妻師岡千代子は、その時の情景を「風々雨々」に書き残している。

また、明のひ孫で歌人だった国見純生もこんな歌を書いていることを、初めて知った。

  諫めて去にし木戸明を「普通の年寄りぢゃけん、吾は秋水の味方ぢゃけん」そのは母言ひしか

木戸明は、秋水が処刑された時は、門下生から罪人を出してしまって申し訳ないと周りに詫びたという。

思想的には真逆のまま譲らなかった二人であったが、師弟のこころのきずなは、最後まで続いたものと信じたい。

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田中全(ぜん)

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四万十市在住。
幡多と中村が自慢のおんちゃんです。

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