幕末維新博に望むこと

 志国高知幕末維新博が3月4日から始まっており、本市サテライト会場「しまんと特別企画展」については、きのう書いた。

本市企画は、独自の視点といい、展示の工夫といい、本市の歴史を紹介するのに的確であり、自信をもってお勧めできる内容であるが、今回の県下統一観光キャンペーンについての尾﨑知事の発言や、それに引きずられたマスコミ等の報道ぶりを見ると、心配な面がある。

今年と来年が大政奉還、明治維新から150年になるのに合わせて、その時期多くの人材を出した高知県が、その歴史と人物を振り返り、彼らを地元資源として観光PRに活用しようとする県の狙いそれ自体には、異議を唱えるつもりはない。同じ四国でも他3県なら、やろうとしてもできない企画であり、賛同もできる。。

今回の企画の発端は、同日オープンした県立高知城歴史博物館にある。山内家伝来資料を中心に展示されており、私も早めに出かけたいと思っている。

展示の目玉は、初めて公開される、坂本龍馬が京都で暗殺される5日前に書いたとされる書簡(手紙)。この中に「新国家」という言葉が初めて使われている。龍馬が暗殺される直前まで、新国家の建設に強い思いをもっていたことがわかる貴重な資料である。

尾﨑知事もさかんにこの書簡をPRしている。だからであろう、高知県作成の公式ガイドブック表紙には、龍馬像がデンと座り、「よみがえる維新の息吹」とアピールしている。

しかし ???
これでは、また、また、また、龍馬かよ~ とまず思う。

2010年、龍馬であい博(NHK「龍馬伝」)
2011年、龍馬ふるさと博
さらに「リョーマの休日」キャンペーン・・・いまも継続中・・・

企画の狙いは、龍馬だけではないはずである。
こうも書かれている。

「 土佐(高知県)は、歴史ロマンの宝庫である。欧米列強に肩を並べる近代国家となった明治・新国家の成立は、幕末・土佐の偉人たちを抜きには語れない。熱き志を胸に、自然豊かな故郷に安住せず、京や江戸へと旅立った若き志士たち。高知を巡れば、彼らの息吹を感じることができる。 」

たしかに、観光中心の「公式ガイドブック」とは別につくられた、幕末維新の土佐「人物紹介」「探訪図会」は、県下歴史関係資料館等の研究員(学芸員)が最新の知見をふまえて、多彩な人材等を紹介している。

龍馬、慎太郎、半平太などのいわゆる「志士」だけでなく、板垣退助、植木枝盛、中江兆民、幸徳秋水らまで。

なかなかの読みごたえがあり、資料的価値もある。しかし、これらの内容を知事や観光スタッフがどれだけ理解をしているか疑問である。

例えば「新国家」である。
龍馬がめざしたとされる「新国家」はその後どんな国家になったのか?

確かに明治新国家は「列強と肩を並べる近代国家」になったというのは一面事実である。しかし、その中身は、主権は絶対的権力をもつ天皇にあり、国民の権利は制約され、教育勅語により天皇の「臣民」となることが強要された。女性の参政権は認められなかった。

軍国主義の途をひらすら進み、朝鮮・中国等の周辺諸国を侵略、植民地化していき、ついには昭和20年の敗戦を迎えた。その間、周辺諸国を含めておびただしい数の犠牲者を出した。

そんな「新国家」の起点となったのが明治維新である。なぜ、こんなありようの国になったのか。それは明治維新の評価にもつながる。

歴史をテーマにした観光企画をおこなうということは、たんに有名な人物を英雄のように取り上げるのではなく、彼らが果たした役割や限界を知り、かつ彼らがかかわった歴史がその後どうなり、どう今につながっているのかを考えてもらうこと、歴史の大局の流れをしっかりとつかんでもらうことにあると思う。

さらに言えば、高知県人であるわれわれ自身が、自らの歴史を深く知り、考えるきっかけにする問題提起の場にも、しなければならない。

歴史は複眼的に見ること。

「龍馬はえらかった」「明治維新はすばらしかった」だけでは、底が知れてしまう。

キャンペーンの旗振り役であり会長である尾﨑知事には、その辺をよく理解したうえで、発信してもらいたい。

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プロフィール

Author:田中全(ぜん)
高知県四万十市(旧中村市)在住。
幡多と中村が自慢のおんちゃん。

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