小林多喜二の墓

 私は20年前転勤で札幌にいたころ、小樽には仕事で何度も来ている。休日にはぶらり観光も。小林多喜二が小樽の人であることは知ってはいた。しかし、その足跡を訪ねることはなかった。なんでと、あとでずっと悔やまれた。

そこで、ぜひ今回はと思った。6月8日、まず、小樽市立文学館へ。旧日銀支店前で、美術館と同居していた。小樽を代表する文学者と言えば、小林多喜二を伊藤整。二人の展示コーナーは、特別に広く仕切られていた。

多喜二は明治36年、秋田県大館の農家に生まれたが、4歳の時、伯父を頼って一家で小樽に移住。小樽商業、小樽高商を出たあと、たくぎん(北海道拓殖銀行)に就職。その頃から、社会問題に関心を持ち労働運動に参加、小説も書き初めた。「蟹工船」「一九二八年三月一五日」などは、小樽時代に書いた。

たくぎんを解雇され、昭和5年上京してからも作品を書き続けたが、思想言論の自由がない時代、昭和8年2月、特高警察に拘束され、即日築地警察署で拷問虐殺された。

展示は、小樽時代の写真や原稿と、虐殺時の写真や絵、新聞記事が対比されるように並べられていた。その中で、息子を殺された母セキの写真と絵に胸を打たれた。

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小樽は坂の町。墓は文学館から車で15分ほど、朝里川温泉に抜ける坂道を上ったところにある市営奥沢墓地の中の斜面にあった。

墓地の入口はすぐわかったが、辿りつくのに時間を要した。事前にネットで調べたら、道案内板がポイントに建てられているというので安心していたが、それがない。入口からまっすぐ上ってから、右折するところでウロウロ。だいたいの見当をつけて、やっとたどりついた。

「小林家之墓」は背が高く、裏には「昭和五年六月二日 小林多喜二建立」と刻まれていた。親孝行の多喜二は、東京に出てからもこまめに家に仕送りしていた。兄が夭折していたため、跡取り息子であった。墓にじっと手を合わせた。

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しかし、周りに墓標や解説板のようなものは何一つなかった。墓筒には造花。多喜二は治安維持法の犠牲者のシンボル。多くの人が訪ねて来ているだろうに、なぜ? と思った。

同じく国に殺された幸徳秋水の墓には、道路入口に碑と看板、墓には墓標と解説板を2枚立てている。墓筒には花や榊を定期的に差し替えているのに。

秋水同様、多喜二命日2月20日には毎年墓前祭が行われている。厳寒期であるため、雪にうずもれた墓を掘り出し、ユンボで道の雪かきをしてから。秋水には白い菊の花を献花するが、多喜二には赤いカーネーション。

おおかた1年の半分は雪の中であろうから、看板を立てても維持管理がむずかしのかもしれない。実際、ネットで見た木製の道案内板も朽ち果てたのだろう。

しかし、多喜二ほどの歴史的人物の墓でありながら、現状、標識板が何もないというのは、いかにも寂しい。金属製の頑丈なものを作ればよいのではないか。

治安維持法の現代版共謀罪が強行採決されたいまだからこそ、多喜二を忘れてはいけない。地元の墓前祭実行委員会のみなさんには、ぜひお願いしたい。資金の問題があるのならば、全国にカンパを呼び掛けてくれれば、私も協力したい。

秋水が小樽に来たのは前号で書いたように明治36年8月であった。その同じ年の12月、多喜二は秋田で生まれている。これは今回気づいた。

また、多喜二が殺された日は、昭和8年2月20日(29歳)。20年後の同じ日に私は生まれている。これは以前から知っていた。

そんな縁がある多喜二だからこそ、看板がないのは気になった。

小林多喜二を描いた映画や演劇は過去何度もつくられているが、このほど母セキを主人公にした映画「母」がつくられた。三浦綾子の同名小説が原作で、主役は寺島しのぶ。7月15,16日、高知市で上映会があるので、見に行きたいと思っている。

念願の墓参を終えてから、山道をさらに5分ほど上のほうに車を走らせ、北海道ワイン株式会社の本社、醸造所、ワインギャラリーを訪ねた。

同社は嶌村彰禧氏が昭和49年設立。最初から国産原料にこだわり、小樽ワインのブランドで製造。かつて仕事でお世話になった先である。その後も会社は順調に業容拡大し、いまや国産ワインとしては日本一。

原料は北海道各地から入れているが、旭川に近い浦臼町には広大な自社農園がある。浦臼といえば、明治時代、坂本龍馬の一族が開拓に入植したところで、その墓もある。そんな縁で、同町と高知県本山町は友好都市縁組をしていることは、先にも書いた。高知県人会で浦臼町ワインまつりに参加したこともある。

北海道みやげにと、小樽ワインを車のトランクにいっぱい買った。

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プロフィール

Author:田中全(ぜん)
高知県四万十市在住。
幡多と中村が自慢のおんちゃん。
幸徳秋水を顕彰する会事務局長。
フェイスブックもやっています。

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