風の恵み

毎日うだるような暑さでまいっているが、子どものころの夏は、暑かったという記憶がない。

家の前の川べりには木立が茂っていた。子どもたちは、川で泳いだり、釣りをして遊び、疲れたら木陰で休んだ。心地よい川風が吹いていた。冷たいぐらいであった。

大人たちも、炎天下の真昼には、農作業を休み、木陰に来て、横になっていた。私の祖母などは、ゴザをもってきていた。木陰には、子ども、大人を問わず、人が集まってきていた。年寄りには、サロンのようになっていた。

家のつくりも風が通るようになっていた。風には、東の風と西の風があった。川風は東の風で、西の風は家の農作業用の納屋に吹き込むようになっていた。

納屋の中に縁台を持ち込み、ゴザを敷いて寝ころべば、スイスイ風が通る。天井からは、暑さで腐らないように、白い飯などを竹籠に入れ、ぶら下げていた。

当時はクーラーなどない時代。夜は、障子を明け放し、蚊帳に入って寝た。扇風機はあったが、あまり使わなかったような気がする。

風をうまく取り込んで、暑さをかわしていた。自然との付き合いが上手だった。いま窓を閉め、クーラーをガンガン使っているのは、風を敵としているようなものだ。

子供のころ、川が目の前にあり、木陰もあったのは幸いであった。恵みの風であった。

しかし、いま川はあるが、木陰がなくなった。堤防の拡張工事のために切り倒されたからだ。誰も、川に近寄らなくなった。

だから、夏は暑くてたまらない。

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プロフィール

Author:田中全(ぜん)
高知県四万十市在住。
幡多と中村が自慢のおんちゃん。

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