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俳人 黛まどかさん (1)

今年の四月下旬、俳人黛まどかさんの秘書で東京にいる坂口郁子さんから私の携帯にかかってきた。

いま、まどかさんは四国遍路を歩いており、そちらに近づいているが、黒潮町入野付近にかかる五月三日は泊まる宿がなく困っている、ついては黒潮町でなくてもいいから、中村周辺で宿を探してもらえないかという依頼であった。
 
まどかさんは、私が属している「幸徳秋水を顕彰する会」会員であり、そうした縁から、昨年九月、四万十市民大学の講師としてお迎えした。

講演後、来年春には念願の四国巡礼に出かけたいと思っており、日程が決まれば連絡をくれると言われていた。だから、もうそろそろだなと思っていたところだった。

私は中村のほうにはホテルや民宿がたくさんあるので、なんとかなるでしょうと簡単に依頼を引き受けた。

しかし、宿はなかなか見つからなかった。知っている限りの先に電話をしたがどこも満室。それもそのはず、五月三日といえばゴールデンウイークの真最中、しかも中村では土佐一條公家行列があり、今年は地元出身歌手の三山ひろしが馬に乗るというし、入野浜ではTシャツアート展の人気イベントはだしマラソンが行われることになっていた。

私は判断が甘かったことを痛感。こうなれば、せっかくの機会なので、わが家でご接待をさせてもらおうと思っていたところ、市内後川にいい宿が見つかった。

そこは普通の民宿とは違い、おしゃれな家の一部を一日一組限定で提供しているお宅だった。営業というよりも趣味の延長のようなもので、あまり宣伝はせず紹介客をメインにしているとのこと。

私はご夫婦とは面識があったが、そんなことをされているとは知らなかった。しかも、たまたまその日は空けておられるということであった。まどかさんは、幸運な人だなと思った。

いよいよ五月三日になった。私は短歌、俳句、川柳には興味はもっている。しかし、なかなか本格的に始める度胸ときっかけがなく、いまだに無粋な人間を通している。

そこで、宮川昭男、尾﨑清、大林文鳥という地元俳界の達人たちにお声をかけた。この三人は秋水顕彰会会員でもあり、昨年市民大学のあとの懇親会にも同席し、まどかさんとはすでにお友達になっている方々である。

午後三時頃、みんなで鞭の道の駅ビオス大方で待っていると、国道の向こうからリュックサックを背中に担いだまどかさんの姿が見えてきた。お供の和田始子さんと二人で。

今年のゴールデンウイークは天気が悪く、その時間帯も雨が降っており、二人ともビニール合羽を着ていた。

二人は道の駅隣観光センターのテーブルにリュックをよっこらしょとおろし、雨に濡れた顔をふくと、やれやれというような笑顔であった。

まどかさんは四月五日、徳島の一番札所霊山寺をスタート。最初は仲間数人と歩いていたが、途中から和田さんと二人きりになった。高知県に入る手前では、足が腫れて病院に行ったそうだが、それでも歩き続け窪川の三十七番岩本寺に着いた。

そこで、どうしてもはずせない仕事があって一週間ほど東京に戻っていたが、五月二日から再開し、最初は伊与喜に泊まったという。

みんなで八か月ぶりの再会を喜び合い、しばし談笑。リュックをもたせてもらうとズシリと重い。これをこんな細い女性が担ぐとはと驚いたが、「女は余計なビン物(化粧品)があるので重いのですよ」とケロリと言われた。

それもそのはず、まどかさんの健脚ぶりは世界で試され済みである。まどかさんは、一九九九年、キリスト教聖地サンチアゴ巡礼を行い、フランスからピレネー山脈を越えスペインまで踏破している。二〇〇一~〇二年には、韓国釜山~ソウルも歩いているのだ。(四国巡礼はこれらより距離が長い)

その日はもう少し距離を稼ぎたいというので、入野浜を突き切った下田の口で再度合流することにした。アドバイス通り、Tシャツアート展を覗いてくれた。

下田の口から後川の宿まで車で送り、翌朝また迎えに行った。佐田沈下橋がすぐそこなので寄っていきませんかとすすめてみたが、少しでも早く歩きたいというので、そのまま引き返した。宿は心づくしの料理も出て、大満足だったそうだ。私は安堵した。

ほかのお遍路さんにも聞いたことがある。観光が目的ではないのでとにかく歩きたい、歩くことが喜びであると。やはりそうかと納得した。

五月四日も雨。下田の口の上林墓碑掲示板前から二人を見送った。その日の宿は下ノ加江。

まどかさんは別れた三日後には、同行の和田さんが名古屋に戻った(予定通り)ことから、それ以降は単独での旅となったが、その後も順調に旅を続け、今日時点(五月二十九日)では香川県のゴール近くを歩いているようである。このまま結願を果たすことは間違いないだろう。

私はまどかさんの遍路姿を見て、また昨年と今年接する中で、この人は本物だなと確信した。それまでまどかさんに抱いていたイメージを払拭した。そして思った。まどかさんは大変な美人である。だから損をしているなと。(続く)


  大方文学学級発行「大形」300号記念号 2017年11月10日

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Author:田中全(ぜん)
高知県四万十市(旧中村市)在住。
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