二つの「四万十」に不信感

(2006年、高知新聞への投稿)

 3月20日、合併により新たに四万十町が誕生した。
これで市と町、二つの「四万十」が隣接することになったが、私はこうなった経過に強い不信感を覚える。
それは二つの合併の軸になった旧中村市と旧窪川町の主体性に対する不信感である。

 まず、両者ともに、そもそも自立への努力説明がほとんどなされないまま、最初から合併ありきのスタンスであった。周辺町村との複数の合併構想に揺れ、当初の構想と異なる組み合わせという結果になったが、その過程では、新しい市・町づくりの具体的プラン等の中身の議論は少なく、いずれの組み合わせでも合併後の名前「四万十」だけが先行・既成事実化していたように思える。

 旧中村市と旧窪川町は、人口、経済力等、どの指標をみても圧倒的に地域の中核であることからすれば、歴史と由緒のある自らの名前の継続を自信を持って主張することは至極当然と思うが、最初から気前よくそれを放棄し、なぜ「四万十」にこだわったのか。しかも、合併の是非を含め、住民投票等による民意に諮ることもないまま、誰がどのようにして四万十に決めたのか納得感がない。

 おそらく行政首脳部は全国的に有名になった四万十ブランドにあやかろうということであろうが、それは合併のリーダーとしての自信のなさの表れではあっても、四万十川を本当に愛し大切にすることにはならない。

 それどころか、二つの「四万十」が並存することは、結果的には寄ってたかって最後の清流の希少価値を引き下げたことになるのではないか。

 全国的にも、最近の政府主導による平成の大合併は、中身よりも枠組み優先の弊害が多くみられるが、二つの「四万十」には、その名前に恥じないような透明な行政運営のもと、実態のある議論により、誇りのもてるふるさとづくりを進めていただくよう、強く望みたい。      


高知新聞「声ひろば」2006・3.24
「わがふるさと中村」所収


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行政の都合で

地名というのは性、苗字と対のはずです。日本だけでなく英国なんかもそうですよね。街の名前を変更するのは発展途上国のすることです。アメリカ大統領選挙にミスター・ナカムラが立候補しても四万十市では盛り上がりませんね。

No title

私は、由緒ある「中村市」が住民投票もなく四万十市に変わり、自分の故郷が無くなったような衝撃を覚えました。 その後、本籍の住所変更の通知も受けました。 他県の友人が、四万十町のニュースを四万十市の出来事と間違えて教えてくれることもありますが、せっかく教えてくれたのに何と言えばよいのか困ることもあります。 「四万十」は本来、川として愛された名称であり、決して市の名称ではありません。 旧窪川と旧中村の二つの「四万十」、おかしな話です。 大変に残念ですが、愛する由緒ある「中村市」に戻ることは今となっては無理かもしれません。

No title

惜別・中村市

四月十日から「中村市」が「四万十市」になったが、なじめない名前である。
私は旧中村市生まれであるが、高校時代以降ずっと離れている。就職後、九州から北海道まで転勤を経験したが、自分の出身地をきかれると、自信をもって「高知県の中村です」と答える。中村を知らないという人には、京都のお公家さんがつくった「土佐の小京都」と言われる街だと言う。昭和52年、中村高校が甲子園で準優勝してからは、「あの高校野球の・・・」と言ってくれる人が増えた。
今回の西土佐村との合併で、なぜ「中村」の名前を残せなかったのか。新しい市の名前を決める住民投票をしたとは聞かないし、誰が決めたのか納得感がない。
清流イメージで、たしかに四万十川は全国的に有名になったし、実家の目の前を流れるこの川に、私は人一倍の愛着と誇りをもっているつもりである。しかし、「四万十」はあくまで川であってこそ価値がある。なんでもかんでも「四万十」では、それこそ最後の清流の希少価値がなくなってしまう。
残念ながら、最近の「四万十」のイメージは、よそに媚を売るような観光主義、商業主義的な響きがするようになった。「四万十」の粗製濫造である。今回は、四万十川を守るべき行政までもが、合併を急ぐあまりに、これに安易に悪乗りしてしまったのではないか。
「四万十市」になれば、私のふるさとは、京都の公家文化の息づく歴史の古い中村市で、そばを清流四万十川が流れていますという自慢話がしにくくなってしまう。中村市を、そして四万十川を愛するがゆえに、自分の大切なふるさとをとられてしまったようで、残念でならない。

高知新聞「声ひろば」投稿、平成17・4・17

プロフィール

Author:田中全(ぜん)
高知県四万十市(旧中村市)在住。
幡多と中村が自慢のおんちゃん。

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