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名護市長選挙の真実(2)

敗戦が決まった瞬間の稲嶺さんの表情がこの選挙のすべてを示していた。

私はネット動画を見ていた。支援者の拍手に迎えられ、選挙事務所前広場に設けられた最前列イスに座った瞬間であった。NHKが相手候補「当確」のテロップを流したのだ。

みんな一瞬ザワザワと、何がおこったのかとお互いの顔を見合う。稲嶺さんの顔がだんだん紅潮し、うなだれるように目線を下に。隣のイスの翁長知事は顔をこわばらせ、じっと前を見る。呆然自失。沈黙が続く。二人とも現実がのどにつかえ、なかなか呑み込めない。稲嶺さんがメガネの下に手を当てる。

沈黙がさらに続く。しびれをきらした取材記者たちが、稲嶺さんを立ち上がらせマイクを向ける。しかし、稲嶺さんは、なかなか声が出ない。

「結果は真摯に受け止めなければならない・・・」

敗因を聞かれても声が出ない。時間をかけて言葉の一つ一つを絞り出すように、

「10年、20年、30年先を見越して取り組んできたが、目先のことにみんな目が行ってしまった。」

「辺野古はもうだめだというが、埋め立てられたのは1%だけであり、まだ止められる」

「争点をはぐらかされてしまった・・・」

立っているのもやっとで、見かねた支援者がマイクに割って入り、稲嶺さんを抱きかかえるようにして事務所に導いた。

こんな光景をはじめて見た。開票のさいは、普通、候補者は別の場所で待機し、結果が出てから支援者のところに顔を出し、敗戦の弁あるいは勝利の弁のあいさつをする。だから、どんな結果になったにせよ、心を鎮めてからマイクを握るものである。インタビューはそのあとだ。

支援者と一緒に開票を見守るというのは、今回相手候補も同様であったので、一族のきずなを大切にする、沖縄特有のものなのだろう。

選挙終盤戦、相手側からのなりふり構わぬ総攻撃にさらされことから、私はこの選挙きびしい結果になることを覚悟していた。おそらく選対幹部なども同様であったと思う。

しかし、稲嶺さんは、自分は必ず勝てると信じていた。市民は自分を選んでくれるという自信があったのだ。

まわりは稲嶺さんの気持ちを気遣い、配慮して、稲嶺さんに「覚悟」を耳打ちしていなかったのだろう。

とりまきは選挙情勢を客観的にみることができるし、そうでないといけない。しかし、候補者本人は、特別の思い入れがあることから、まわりが見えないものである。特に独自の権限をもつ首長の場合は。だから「お山の大将」とか「裸の王様」といわれるのだが、これは自分の経験からもわかる。

自分に自信がある場合特にそうなる。稲嶺さんは、市民のためを思い全身全霊をかけて市政に取り組んできたのだ。そんな自分を市民が選んでくれないはずはない。市民を信頼していた。

稲嶺さんは、いわゆる政治家タイプではない。最も遠い人だ。真面目、実直な市役所職員から、収入役、教育長をつとめた人だ。訥々とした話しかたで、とても演説向きではない。しかし、だからこそ信頼、誠実がにじみ出ている。

もともと保守の人で、8年前、議会保守系議員から、辺野古を止めるにはアンタしかいないと懇願され、かつぎ出された。革新系はあとから加わったのだ。いまの「オール沖縄」の原点はここにある。

今回相手候補は、経済活性化を叫んだが、経済は平和と安心があってこそ成り立つ。また、米軍基地は経済振興の最大の障害になっている。

稲嶺さんが市長になったことで、基地再編交付金はストップされた。しかし、この8年間で名護市の財政規模(予算)は287億円から382億円に増加。市の貯金にあたる基金積立金も38億円から72億円に。

県内11市の中で経済成長2位、中学卒業までの医療費無料化に最初に取り組み、国保税も一番安い。

基地再編交付金に頼らなくとも、見事に安心で安全、住みよいまちづくりを進めてきて、その実績をあげてきた。

さらに、50年先を見越したデザインを描き、次の4年間に取り組むことも決めていた。「子どもの夢未来紡ぐ名護のまち」へ、堅い決意で燃えていた。

それが稲嶺さんの強い自信と確信になっていたのだ。自分が負けるはずがないと。

しかし、選挙は残酷である。いくら見事な実績をあげ、立派な政策をつくっても、有権者がそれをみて、きちんと選択をしてくれるわけではない。

選挙は票取りゲーム。結果は数で決まる。どの票も1票は1票。どんな方法、手段でも多く集めたほう、奪ったほうが勝ちである。

相手はそこが巧妙だった。基地問題を避け、はぐらかす。堂々の論戦を逃げ、誹謗中層、デマをたれ流す。さらに、政府の権力、金力で組織団体を締め付け、囲い込み、期日前投票に送り込む。小さな城に大軍勢が総攻撃をかけたのだ。

勝ちさえすればいい軍隊は強い。大義名分はどうでもいい。政策はないほうが動きやすい。その場その場で、なんでも言える。権謀術数、あらゆる手を使えるからだ。相手にはそのノウハウにたけていた。

それでも稲嶺さんは自信があった。自分は絶対勝てると。
市民を信頼しきっていた。稲嶺さんは言葉を用意していなかったのだ。

それが、あの敗戦の弁になったのだ。

そんな選挙だった。

(続く)

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Author:田中全(ぜん)
高知県四万十市(旧中村市)在住。
幡多と中村が自慢のおんちゃん。
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