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岩崎革也

3月10日、岩崎革也の資料展示と講演会があるというので、京都府南丹市園部町に出かけた。

岩崎革也(1869~1943)の名前を知ったのは、2010年、田中伸尚著「大逆事件―死と生の群像」(岩波書店)を読んでから。幸徳秋水、堺利彦らの運動を経済的に支援した京都丹波の地主、銀行家として書かれていた。

1911年1月、秋水ら12人が大逆事件で死刑(ほかに無期懲役12人)になった直後の4月~5月、堺利彦は約1カ月かけて遺族の慰問に全国をまわった。中村にも来ている。その旅費等の費用300円はすべて革也が出したものであった。

革也は秋水らが発行していた平民新聞にもたびたび多額の寄付をおこない、名前が載っている。経済的基盤を持たない秋水らの運動にとって一大スポンサーであったのだ。

岩崎家は園部町に隣接する旧須知村(のち町、現京丹波町)で酒造業を営む地主であり、父の代に銀行(須知銀行)も設立していた。革也は、須知町長、府会議員も務めている。

明治2年生まれで秋水より2歳上の革也がどのような経過で思想的に秋水らに接近したのかについては、はっきりとした記録が残っていない。

推測できることとしては、青年時代、丹波地方で盛り上がっていた自由民権運動の影響を受け、その後、父の命で株の勉強をするために大阪へ出た時期が、中江兆民が大阪にいた時期(東雲新聞主筆)と重なるので、両者接触があったのではないか。

革也はのちに自分の初孫に「兆民」の名前をつけているので、そのことがうかがえる。兆民の家には当時書生であった秋水がいた。

岩崎家の旧邸宅はずっと地元に残っていた。しかし、京都縦貫道(高速)延伸工事のために、2013年、解体を余儀なくされた。

これを機に、地元高校教員OBらが中心になって「京都丹波岩崎革也研究会」を立ち上げ、邸内に残されていた膨大な書籍、書、日記、書簡などの保存に取り組んできた。

書簡は、秋水、利彦のほか、幸徳千代子、駒太郎、大石誠之助、森近運平、福田英子、北一輝からのものなど多数。書も、利彦、犬養毅、田中正造など。これらは南丹市立文化博物館に一括寄贈・保管されることになった。

3月10日、同博物館において、これらの資料の一部が展示されたほか、研究会メンバーらによる研究発表(原田久、芦田丈司、奥村正男、田中仁)が行われたのだ。

革也の孫で現岩崎家当主95歳の長(つかさ)氏も、京都市内から娘さん、お孫さんと参加をされていた。

研究の目玉、革也の日記は、その抄録が出版され、当日参加者に配布された。全253ページにおよぶ労作である。

しかし、日記は、大正6年(1917)から昭和18年(1943)没するまでしか、残されていなかった。革也は官憲から「要視察人」としてマークされていたので、身の安全と周囲に類が及ぶのを避けるため、それ以前の日記は、いつかの時点で処分したものであろうとされている。

革也の元の名前は茂三郎であり、明治36年(1903)、改名している。この年は、秋水、利彦は万朝報を退社し、平民新聞を立ち上げた年である。「革命」の字をとったところに、熱く燃える胸の内がうかがえるのだが、残念ながら、その思いを綴ったものは残されていない。日記以外には、ほかに書いたものがない。
いつのころからか「秋月」の号も使っている。

革也は京都で最初の社会主義者とも評されているが、その思想的背景は、日記や書簡、また交流人物から類推することしかできず、その輪郭ははっきりしていない。直接運動に身を投ずることはなく、逮捕・投獄もされていない。

いまの時代なら、資産家が遺産の一部を財団法人や基金として自治体等に寄付(寄託)し、それを財源として奨学金として提供するような例がある。

しかし、秋水らを支援した革也の行動は、国家社会を変革するための運動に共鳴し、直接支援したものであり、日本の資産家(資本家)のありようとして、特筆されるべきであろう。日本近代化の過程のなかで、革也のような地方名望家がいたことを。

革也の支援がなかったならば、秋水、利彦らの運動は、もっと早くに挫折していたのではないか、とも思う。

今回展示の中に、「コオトクホカニジュウサンメイシケイ」、明治44年1月18日、大逆事件判決を知らせる利彦からの電報があった。

同年4月、利彦が秋水墓を訪ね中村から出した葉書2通もあった。「行春の緑の底に生き残る」の句を添えて。

また、明治38年、渡米前の秋水から届いた手紙には、妻(千代子)と甥(幸衛)を連れて行くと書いてあった。実際は、妻を連れていかなかったのだが、最初はそんなつもりだったのか。もし連れて行ったのならば、行動も制約されたことであろうから、「余が思想の変化」にも至らなかったのではとも思われた。

革也を通して、100年前の日本の状況がリアルに伝わってきた。

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Author:田中全(ぜん)
高知県四万十市(旧中村市)在住。
幡多と中村が自慢のおんちゃん。
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