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オウム裁判と大逆事件

7月6日、オウム真理教事件の死刑囚7人の死刑が執行された。

1980年代末から90年代半ばにかけて、世間を驚愕させた事件(坂本堤弁護士一家殺害、松本サリン、地下鉄サリンなど)であり、犠牲者は死者29人、負傷者6千人超にのぼるというから、いずれ死刑執行があるものと思っていたが、いざその日を迎えると、動揺をおぼえた。突然のことであったから。

最初に思ったのは、なぜこのタイミングなのか、ということ。政局などを踏まえた高度な政治的判断があったものと考えられ、いろいろ勘ぐられているが、ここでは深入りしない。

次に思ったのは、大逆事件のこと。同事件では幸徳秋水ら12人が同時(管野須賀子だけは翌日)に処刑された。

今回、上川法務大臣は記者会見で、7人同時処刑は最近ではなかったことと言っていた。おそらく大逆事件以来のことではないかと思う。

そこで、私が強く思ったのは、改めて、大逆事件がいかにひどい裁判であったかということ。

まず、二つの事件を比較すると、逮捕から死刑執行に至るまでの経過、手続きが大きく異なっている。

オウム事件から。

主犯の麻原彰晃(松本智津夫)が上九一色村で逮捕されたのは1995(平成7)年6月。ただちに起訴され、一審、二審を経て、最高裁で死刑確定したのが06年9月。この間、11年3カ月かかっている。

今回処刑された者など他の被告らも合わせると、189人が起訴され、2011年12月までに、13人死刑、5人無期懲役が確定。

事件はこれで事実上終結したが、その後も一部逃亡者などの逮捕、出頭、その裁判などがあり、これらの追加裁判が終結(再審請求などを除く)したのが今年2018年1月。

そして、7月6日、死刑囚13人のうち6人の刑が執行された。

主犯とされる麻原彰晃でいえば、逮捕されてから、死刑執行まで23年1カ月の期間を要している。(死刑確定からは11年10カ月)

一方、大逆事件(別名幸徳事件ともいわれる)

「首魁」とされた幸徳秋水が「天皇暗殺謀議」を理由に、湯河原温泉で逮捕されたのは1910年(明治43)6月。

刑法73条(大逆罪)で起訴され、いきなり大審院(いまの最高裁)で公判が始まったのが同年12月。

翌年1月18日死刑判決(確定)。死刑24人、有期刑2人。(ただし、12人は翌日「恩赦」で無期懲役に)

1月24日、秋水ら11人、翌25日、管野須賀子死刑執行。

秋水逮捕から死刑判決まで、8カ月。
判決から秋水死刑執行まではわずか、6日。

23年1カ月と 8カ月の差。
11年10カ月と 6日の差。

さらに、大逆事件裁判は大審院の一審だけ(大逆罪規定による)、非公開(根拠なし)であった。経過と形式だけをみても、大逆事件裁判の異常さが表れている。

さらに、裁判の中身はひどいものであった。

オウム事件では、複雑怪奇な事件の背景、犯罪経過の解明が綿密に行われたものと思う。だから、これだけの時間を要した。事実関係について、(被告側弁護士は別にして)各方面からの有力な反論や疑問が出たとは聞いていない。

さらに、死刑確定後も、世論の動向(納得感)等、もろもろの状況等を勘案。死刑囚とはいえ一人の人間である。人権は最大限保障されなければならない。そうした、もろもろの配慮があったからこそ、刑の執行までに時間を要したのであろう。

一方、大逆事件では、そんな配慮は微塵もなかった。最初から結論ありきであった。

国家にとって都合が悪い人間は抹殺しなければならない。天皇暗殺、皇太子暗殺、決死の士を募る、等の事件のシナリオを検察がつくりあげた。

誰も人を殺していない。その行為も行なっていないので、未遂でもない。あえてこじつければ、計画・相談。

裁かれたのは「行為」ではなく、彼らの「思想」であった。

当時、秋水は世界的にも名前が知られていたので、裁判に対して、海外からの批判が寄せられ、その波はごうごうと高まっていた。

だから、死刑執行を急いだ。

今回、死刑執行の場所(拘置所)は、東京3人、大阪2人、広島1人、福岡1人に分かれた。

報道によれば、一つの拘置所で死刑執行できるのは、一日3人まで。理由は、教戒師面会等、最期の時間を与える手続きがあるからだという。これも人権への配慮であろう。

大逆事件の処刑の場は、12人全員東京監獄。同じ日に(管野須賀子だけ翌日)絞首台へ送った。

大逆事件は国家犯罪であった。

日本は事件の同年、韓国を併合。
以後、戦争への道を突き進み、昭和20年8月15日の敗戦を迎えた。

「平成」は来年で終わる。(今回の死刑執行の理由の一つと報道されている。)

秋水らは処刑も明治43年(1911)であり、やはり翌年、明治が終わった。

私は元号に反対であるが、次の元号の時代がかつてのような戦争の時代の再来にならないことを願う。

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Author:田中全(ぜん)
高知県四万十市(旧中村市)在住。
幡多と中村が自慢のおんちゃん。
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