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映画 あやに悲しき

このほど念願だった上林暁原作の映画「あやに悲しき」をみた。黒潮町あかつき館で再生DVD版がみられるようになったので、テレビ画面で。

原作は代表作「聖ヨハネ病院にて」など、いわゆる病妻もの。昭和31年、劇団民芸の制作で、俳優宇野重吉の第1回監督作品。脚本新藤兼人。上林がモデルの主人公役は信欣二、妻役は田中絹代。

噂に聞いていた通り、暗い内容だった。テーマがテーマで、またモノクロだけに、なお重い。

地味で売れない私小説作家小早川武吉の妻の徳子は日に日に言動がおかしくなる。病院に入れるが、医師から手に負えないと言われ、精神病院に移される。

幼い子供が二人いるので、小早川は高知の実家から妹に手伝いに来てもらい、小説を書き続けるが、イライラが募る。妻にもつらくあたる。作家仲間も心配してくれるが、酒でうさを晴らすしかない。先がみえない生活。

精神病院がキチガイ病院と言われた時代である。病人に対する見方もいまとは違う。いまはメンタルの問題は、ごく普通の病と見られているが、当時は偏見が大きかった。

そんな時代であったが、原作では、病院での夫婦のやりとりの中に、ユーモアをもたせたりして、人間への温かみや信頼、ヒューマニズムのようなものがにじみ出ていた。

そんなところを映像で表現するのがむずかしかったのか。それとも、昭和31年当時は、これが芸術性として評価されたのか。

最後のシーンに、木の枝の上で体を寄せ合う小鳥がアップで出てきたので、少しは救われたが、全体の暗い印象を拭うには程遠かった。

それよりも、宇野、新藤という制作スタッフだけでなく、俳優陣も、ほかに滝沢修、山田五十鈴、東野英次郎、奈良岡朋子、芥川比呂志、下元勉、内藤武敏、北林谷栄、フランキー堺、佐野浅夫など、いまからみれば、超豪華な顔ぶれが出ていた。名優の若いころを見られるということで、値打ちがある。

宇野重吉は上林ファンで、こだわった作品だとされているが、いまは忘れられた作品になっているのが残念だ。

なお、「あやに」は古語で、「言いようのないほど」「むしょうに」などの意味。

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Author:田中全(ぜん)
高知県四万十市(旧中村市)在住。
幡多と中村が自慢のおんちゃん。
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