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無鄰庵

12月16日、京都へ用事があって出かけたさい、すこし時間があったので、東山界隈を散策した。最初に南禅寺へ。

紅葉の時期は過ぎ、シンボルの庭のもみじ葉は落ち、冬枯れとなっていたが、これはまたこれで風情があった。

兼好法師が「花は盛りに月は隈なきをのみ見るものかは」と書いているが、これは紅葉にも言えることであると思った。

次に、すぐ近くの無鄰庵に寄った。南禅寺は何度も来ているが、無鄰庵は2度目。12年前、京都に住む友人が穴場スポットとしていいところがあると連れて来てくれたことを思いだしたので。

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今は京都市が所有管理しているが(寄贈受)、元は山縣有朋の別荘で、明治36年4月21日、日露開戦方針を決めた会議(無鄰庵会議)がここで行われたことをその時はじめて知った。

会議のメンバーは、ほかに当時の首相桂太郎、政友会総裁伊藤博文、外務大臣小村寿太郎。

当時、私は中村に帰る前で、大阪に住んでいた。琵琶湖からの疎水を引き込んだ日本庭園はこじんまりして、その時は11月初めで紅葉の見ごろでもあったのに人も少なく、なかなかいいなと思った。

山縣有朋については、明治大正期の元老で政界の重鎮であったことはもちろん知っていたが、その時は、山縣は東京にも別邸椿山荘をもっていたので、東西の都に別荘をもつなんて、明治のドンはさすがだなぐらいの印象しかなかった。

しかし、今回は違った。山縣が大逆事件をつくりあげた黒幕であったことを、その後知ったからだ。

幸徳秋水らが逮捕されたのは明治43年6月。その時の首相は桂太郎(第2次桂内閣)。

前の首相は西園寺公望であり、日露戦争に反対した幸徳秋水らの運動に対する西園寺内閣の取り締まりは手ぬるいと、イライラした山縣有朋が裏で画策して西園寺を退陣させ、子飼いの桂太郎に再度の組閣をさせたのだ。

桂内閣は、秋水逮捕の年には、日韓併合もおこなうなど、強権強圧政治を行った。

今回の無鄰庵は、そんな背景を詳しく知ったあとだったので、見る目が違った。前回はさらりと見るだけであったが、今回はじっくりと見た。

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正直なところ前回よりもいいなと思った。庭の中には自由に入り、一周できる。疎水の水がさらさと池に注ぐ。池はそう深くはない。

芝生や苔の中に、野の草花が点々と植えられている。自然のままの野を歩いているようだ。庭全体がゴテゴテしていない。

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木造2階建ての母屋にあがってみる庭は、またすばらしい。

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隣の洋館2階は応接室になっており、この部屋で4頭会談が行われた当時の様子がうかがえた。

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1階は、庭園の解説などの展示。作庭は第7代目小川治兵衛という有名な庭師がおこなったが、山縣の思い入れや美意識が細かく反映れているという。

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そんなことが庭の隅の木陰に控えめに建つ石碑「御賜稚松乃記」に刻まれている。

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名も知らぬ野の草花を好み、苔と芝を種類によって分け、隅々に配置したことなど。

山縣はこの別荘をこよなく愛し、多忙な公務の間でもたびたび夫人を伴って訪れているとも。(庵の名の由来は、山縣が最初長州に建てた草庵が隣家のない清閑な場所にあったため)

山縣がそんな風雅な感性をもっていたとは意外である。

私のイメージとはまったく合い容れない。山縣と言えば謀略と弾圧で秋水らの首をくくった黒く汚れた手をもつ権力の象徴だからだ。

人はいろんな顔をもっている。

自然と同じで、人のこころのうちは奥深いもので、はかり知れない。

そんな思いを深くした。

ここには秋以外の季節にも、また来てみたいと思う。


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Author:田中全(ぜん)
高知県四万十市(旧中村市)在住。
幡多と中村が自慢のおんちゃん。
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