東洋町

 2月19日、東洋町に行ってきた。
 同町は高知県の東端で徳島県と接している。私はこれまで室戸岬を越えて東には行ったことがなかった。われわれ幡多、西の人間からすれば、高知市から東、特に安芸市から向こうは同じ県とはいえ、ほとんど縁がない。ましてや、室戸から向こうとなると、国そのものが違うという感じだ。

中村から高知市までが110キロ、さらに110キロも先なのだ。片道5時間。高速を使えば、松山、高松、徳島のほうがはるかに近い。

そんなに遠い東洋町へなぜ出かけたかというと、同じ県内なのだから一度は行って見たかったことと、「核騒動」のその後がどうなっているのかを知りたかったためだ。松延町長に会った。

 7年前、当時の町長が突然、独断で、高レベル放射性廃棄物最終処分場の誘致に向けた調査に名乗りをあげた。核廃棄物処分場に地元から手をあげたのは全国初ということで注目を浴びたが、これが混乱の始まり。町長は、過疎が進み、行く先が見えない町の将来のための「切り札」として、多額の補助金等がもらえる同施設の誘致を考えたという。

町長は民意を問うとして辞任し、再選挙に打って出たが、受け入れ拒否を掲げた対立候補に大差で敗れた。議会も受け入れ拒否を決議し、この問題そのものはすぐに決着した。

しかし、余波が大きかった。もともと東洋町になる前の地域間対立(昭和34年、甲浦町と野根町が合併)が潜在する土地柄のうえに、新町長の強引な町政運営も手伝って、様々な地域の問題が噴出。町が多くの裁判にかかわるなど、混乱はむしろ拡大した。新町長は、1期4年で今度は逆に大差で退陣を余儀なくされた。いまは、松延町長がその収束に腐心をしているところだ。

 原発は地域を分断する。最近、高知新聞で伊方原発(愛媛県)ができたさいの地元の実情を振り返る連載記事があった。町は地元には原発を誘致することを隠して、町職員がひそかに土地の買収交渉を進め、目処がたったところで四国電力が表に出る。地元は大混乱するが、もう遅い。対立と不信。住民同士は正直にモノが言えなくなる。地域社会が崩壊する。

東洋町の主産業は農業(ポンカンの産地)と漁業。甲浦港は、かつては大阪―高知を結ぶフェリーの中継港であったが、フェリーも途絶えて久しい。わずかに甲浦から徳島方面に鉄道(第三セクター)でつながっているので、経済圏はむしろ徳島県だ。

いまの人口は2800人台にまで減少。過疎化に歯止めがかからないのは高知県内どこもそうだが、ここをふんばり抜くためには、地域のまとまりや結束力、人と人とのつながりが大前提になる。

 今でもマスコミからの取材は多い。触れられたくない過去を早く忘れてほしい、と町長は言う。得体のしれない怪物に翻弄された傷の深さは、夕暮れの海の底までつながっているのだろうか。

 暗い気持ちで中村に帰りついたのは、夜10時を過ぎていた。

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Author:田中全(ぜん)
高知県四万十市(旧中村市)在住。
幡多と中村が自慢のおんちゃん。

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