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市立愛育園の歴史(2)

昭和21年12月21日、南海地震が発生した。

旧中村町は四万十川本流と後川に挟まれたデルタ地帯に乗っかっており地盤が弱いことから、ほとんどの建物が倒壊し、さらに火災も発生したことから、壊滅状態となった。死者の数は、市町村別では全国最多の273人に及んだ。

呆然自失の中、復旧復興に前面に出たのは青年団であった。中村町青年団(団長・兼松林檎郎)は敗戦からわずか2週間後、昭和20年9月1日、いち早く結成されていた。

地元はもちろんのこと、幡多郡下の青年団が続々と中村に結集し、あらゆる救援活動に従事した。

震災直後、救援物資が下田港に船で届いた。その運搬搬入は道が陥没してトラックが使えないので、青年団が大八車などの人海戦術で一手に引き受けた。

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被災者は、がれき撤去作業などで、子供の面倒をみることができなかった。当時、中村町内には町立保育所(名前は中村幼稚園)がひとつだけあったが倒壊。行政は、緊急事態でやるべきことがたくさんあり、保育所どころではなかった。子どもは放置された。

そんなことから、子どもたちの世話は中村青年団が引き受けることになった。場所がないので、一條神社の境内に集め、女子部員が中心となって、青空保育をおこなった。子どもは150人ほど集まった。

しかし、一條さんは山の上であり、子どもには危険ということで、次は大神宮に移った。だが、夏場に、子どもの一人が「あつけ」にかかり死ぬという事態がおこった。

これは大変、バラックでもいいから屋根が必要ということで、いろいろ物色したが、ほとんどが倒壊しているためそんなところはない。では、自分たちで建てようということになった。

中村青年団でこれの担当になったのが、本田悦造さん(本田歯科弟、のち高校教員)と澤田寛さん(太陽館)であった。

その頃、中村青年団初代団長兼松林檎郎は、新たにつくった拡大組織、幡多郡連合青年団団長も兼ねることになったので、本田さんが中村青年団の2代目会長になっていた。

建設場所は中村小学校の北西角の農地(いま清水バレー教室のある一角)を、藤娘酒造の山本充さんが青年団のためということで、1反20万円という安値で譲ってくれることになった。

しかし、カネがない。建築資金も。そこで、本田さんは、昭和22年7,8月の70日間、地元選出国会議員などに寄付をつのるため上京した。本田さんは、一高、東大を出たばかりであったので、東京には土地勘と人脈があった。

一高時代剣道部の先輩石田和外氏(司法省人事課長、のちの最高裁長官)宅に泊まり込ませてもらった。

寄付集めは、最初なかなかうまくいかなかったが、中村の子どものためという趣意書と熱意が通り、徐々に集まりだした。吉田茂総裁、林譲治、寺尾豊、西山亀七各代議士など。

林譲治代議士からは、「今回の君の趣意書は関係大臣にも渡り、保育行政上の政策にのせることになったよ」の言葉をもらい、感激した。

保育所の名前は愛育園とすることにした。
子どもを愛(いつくしみ)育(はぐくむ)。

いよいよ土地造成から始まった。大工の棟梁は宮上さんに頼んだが、素人でもかまわないということで、青年団が入れ替わり手伝った。

最初屋根は杉皮葺であったが、お粗末だということで、瓦葺の天井付き、取り外し可能な仕切りをつけ、4室と3畳くらいの事務室に便所。青年団が会合をする時は仕切りをはずして広いホールにできるようにした。

青年団の献身的な活動が認められ、昭和22年12月、高知県厚生課は愛育園を公認保育園に指定した。戦後はじめてのことで、ほかに旭保育園(高知市)、宿毛保育園も認可された。国、県の補助金をもらえるようになった。

昭和23年5月には、奈良ホテルで、第1回保育連合会奈良大会があり、本田団長が参加。まわりの代表は年配者ばかり。青年団がつくった保育所というのは全国のほかにはなかったものだから、会場で紹介され、万雷の拍手を浴びた。

そして昭和23年10月、愛育園は落成した。園長には一條神社宮司川村清水氏に就いてもらった。運営は無償奉仕で、中村町からはいっさいの補助は受けなかった。

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    落成の日

中村の郷土史家の沢田勝行さん(昭和19年生れ)は、落成後愛育園への入園1期生であり、入園当初、まわりは田んぼばかりであったことをおぼえているという。

以上は、平成10年(1998年)5月発行された『青春の軌跡 ― 幡多郡連合青年団の記録』(同編集委員会発行、代表長谷川賀彦)を参考資料にしており、一部引用もある。同記録は図書館で借りられる。(続く)

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Author:田中全(ぜん)
高知県四万十市(旧中村市)在住。
幡多と中村が自慢のおんちゃん。
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