四万十市立市民病院

 2月28日、日本医労連(医療労働組合連合会)主催の自治体・公立病院全国交流集会が愛知県豊橋市で開かれた。私はその記念講演を頼まれ、出かけてきた。会場は豊橋市民病院。ここに全国の公立病院で働く人たち約70人が集まっていた。

全国の公立病院はいまどこも厳しい経営環境にある。私の演題は「自治体病院をどう守るか-四万十市立市民病院 4年間の試み」。市長としての4年間の取り組みについて、話をさせてもらった。

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 四万十市立市民病院は、昭和27年、幡多国保病院として設立。昭和39年、中村市立→平成17年、四万十市立に。市内だけでなく広く幡多全体の地域医療を守る中核病院としての役割を果たしてきた。

経営はいつの時代も楽ではなかったが、ここにきて再び悪化。引き金は、国の医療制度改革の一環として10年前(平成16年)からスタートした新医師臨床研修制度(医師が自由に研修医療機関を選べる制度)。大学(徳島大学、高知大学)から医師派遣がむずかしくなり、市民病院の医師が急速に減少。ピーク18人いた医師が、平成21年には6人にまで減ってしまった。

この結果、平成19年からは24時間救急ができなくなり、ベッド数も130→97に削減、付属2診療所も廃止した。

30億円を超えていた医業収入も17億円台にまで激減、経常赤字は3億円近くまで拡大。病院の資金繰りを支援するために、市は一般会計から平成19年度3億円、20年度2億2千万円(この財源は市職員全員賃金カット、翌年は病院職員のみの賃金カット)の繰り入れを行なった。
私が市長になったのは、そんな渦中の平成21年5月であった。

病院を支えることは市の大きな負担。当時、今後病院をどうするか、病院は必要か、多くの議論があった。そうした中、私は病院をいまのままの公立病院として存続させることを明言し、経営再建に向けて取り組んだ。

外部からコンサルタントを入れ、無駄な経費の削減を徹底する一方で、診療報酬加算の余地等を追求し、効率的運営に努めた。しかし、再建の基本方向は、公立病院としての本来の役割の発揮、つまり民間医療機関ではできない高度な医療の提供等、医療内容の維持・拡充においた。市民はそれを最も期待している。そのためには、医師数を回復させなければならない。どんな改革も、病院に医師がいなくてはできない。

大学派遣がむずかしいなら、自ら医師を集めるしかない。地元出身者等、いろんな縁故、紹介を頼りに、多くの医師に接触。病院ホームページもリニューアルし「自然豊かな幡多で働きませんか」と呼びかけた。職員のモチベーションを削ぐ、賃金カットはやめた。逆に医師の処遇は改善した。

その結果、4年間で7名の医師を迎えることができた。この間、2名が新たに辞めたので、差し引き5名増。医師数は6名→11名に回復。休診中だった泌尿器科も再開した。

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また、市の保健介護課とタイアップして、脳ドック健診(市が費用の8割補助)と医師による地域訪問健診を開始。脳ドッグは申し込みが殺到し、抽選でないと受け付けられない状態だ。

さらに、病院広報誌「せせらぎ」も発刊し、全世帯に配布。一條大祭(いちじょこさん)にあわせ、健康フェアも開催し、血圧測定や栄養指導などを実施。市民との情報交流も進めた。平成24年秋には、テレビドラマ「遅咲きにヒマワリ」の舞台になり、ロケに協力した。

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市民病院の将来を市民にも一緒に考えてもらおうと、市民各層から23名の委員を募り、「市民病院の今後のあり方検討会」を開催。8回の議論を経て、今後のさらなる「経営改善計画(平成25~27年)」をまとめた。

市民も交え、病院一丸となった、こうした取り組みを通して、平成23年度以降は、病院利用者数も再び増えはじめ、その結果、医業収入も21億円にまで回復。平成24年度経常赤字は3千5百万円(繰入なし)まで圧縮。今年度(25年度)は退職金支出の変動要因を除けば、当初予算通りの黒字5百万(3千5百万円繰入あり)を確保できる見込みである。

 医師数が一定回復したことを主因にして、市民病院の経営再建は軌道に乗りつつある。今年度も「経営改善計画」通りに進んでいる。・・・これが現状である。

にもかかわらず、最近また妙な議論が耳に入ってくる。「市民病院の経営は悪化している。再び賃金カットも視野に、計画を抜本的に見直さなければならない。」???

 いま重要なのは、再建をより確実なものにするために、医師をさらに増やして、病院の医療体制をより充実させることである。まだ24時間救急は復活できていない。残念ながら、この約1年間、医師数は11名で横バイのまま。医師がもう少し増えれば、収支変動要因(退職金支払等)を含めても、安定的な黒字を確保できるところまできている。

病院の経営再建は、医療体制をさらに充実させる方向でなければならない。これが市民の期待であり、市民の命と健康を守り、幡多の地域医療を守る途である。

王道を踏み外した、木を見て森を見ない「改革」では、再び負のスパイラルに陥ってしまうことを心配している。

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http://www3.city.shimanto.lg.jp/hospital/index.html

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プロフィール

Author:田中全(ぜん)
高知県四万十市在住。
幡多と中村が自慢のおんちゃん。
幸徳秋水を顕彰する会事務局長。
FB(フェイスブック)もやっています。

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