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尾﨑県政12年を問う

尾﨑正直知事が退任する。私はこの間、四万十市長としての時期が重なったので、その経験をもとに、地方自治の視点から尾﨑県政12年間を検証したい。

憲法で人に基本的人権が保障されているように、地域には自治権が認められている。

国に対する地方自治の基本単位(基礎自治体)は市町村であり、地方自治法で定められている。県は中間的存在だが、市町村の連合体ではない。長は別に選ばれるように、それぞれ独立、対等平等の関係にある。

知事は県民の代表とは言えるが、市町村の代表ではない。

住民が戸籍、税金、国保、年金、保育所、水道、救急(消防)など、日々生きていくための切実な問題で相談に出かけるのは市役所、町村役場である。県庁に出向くことは、まずない。

尾﨑知事は就任期間、県勢は浮揚に転じたと自画自賛している。中央官庁での経験を生かし、自ら先頭に立ってエネルギッシュに動く姿は頼もしいし、県民の評価も高い。看板政策の産業振興計画では成果が数字に反映しているものもある。

しかし、それが果たして足元で実感されているだろうか。

県の産業振興計画と言っても分解すれば大半が市町村策定の計画。「地産外商」はもともと四万十市の生産加工グループが最初に使った言葉であるように、市町村の計画を集めて県がフォーローアップ会合で進捗管理する仕組みとなっている。

県認定を受ければ補助金が出るので、市町村担当者は要綱に従って事業を考える。しかし、補助金に慣らされるとその範囲でしか発想、企画ができず、創造力が働かなくなってしまう。

集落活動センターは私の在任中、市町村への事前の相談、協議もなくつくられた制度であり、中山間地にスポットを当てるその狙いはいいが、県が前面に出すぎると市町村の存在意義がなくなる。個別集落の実情、住む人の顔などは市町村職員が一番よく知っているのだから。これでは職員が育たない。

住民は現に生活している地元がしっかりしてくれないと不安なものである。

県の役割は住民に頼りになる市町村をつくるための後方支援であるべきだ。自らが権能、機能を拡大することではない。

しかしながら、本県大川村が試みようとした住民直接自治については、過疎、人口減少に悩む自治体の究極の生き残り策として全国からも注目を浴びたが、結局のところ県は抑止に動いた。 背景には国の意向が働いたものと思われる。

知事は県民の命と生活を守るためには、国の方針に沿わない内容でも県民代表として堂々と意見を述べてほしいものだ。

しかし、尾﨑知事は伊方原発再稼働を容認。米軍機の事故やオレンジルートでの訓練に対し、超低空飛行の中止は求めても、訓練そのものは必要としている。

また、憲法審査会の高知県公聴会は、知事は公的な場で発言機会がいくらでもあるので、本来一般県民が意見を言う場であるにもかかわらず自ら手を上げ、出席6人の中で唯一人、安保関連法案に賛成意見を述べている。

一方で、宇宙空間を飛ぶ北朝鮮ミサイルに対して、サイレンを鳴らし保育園児にまでかつての空襲警報さながらの訓練を強いるなど、恐怖をことさらにあおる国の政策に過剰に追従するなど、県民意識とのズレが目立った。

住民の命や生活を守る行政の最前線基地は市町村である。それぞれ地域条件が異なる中で闘うためには、自ら状況判断し機敏に動く力が求められる。自主、自立(自律)である。

県は国の支店ではないし、ましてや市町村は県の出張所であってはならない。不安が深まった12年間であったと思う。


高知新聞「所感雑感」投稿 2019.10.7

尾﨑県政12年を問う 所感雑感 田中全元四万十市長





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Author:田中全(ぜん)
高知県四万十市(旧中村市)在住。
幡多と中村が自慢のおんちゃん。
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