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湯村温泉

11月2日。豊岡に泊まった翌日は日本海の海岸線を通った。朝からしとしと雨で肌寒い。私の心は日本海の濃い青の鉛のような色に引き込まれる。太平洋の淡白な色とは違った人間の深さをおぼえる。雨がその雰囲気を一層かもしだしている。

丸山川の土手を下ると河口の手前、支流が注ぎ込むところに城崎温泉がある。文豪志賀直哉の「城崎にて」で有名であるから、一度どんなところか来てみたかったところ。城崎町は、いまは合併で豊岡市の一部。

幸徳秋水らの平民新聞を資金面で支援をした京都丹波の岩崎革也(須知町)の常宿もあり、堺利彦が訪ねて来て一緒に逗留したこともある。その宿はいまも残っているのだろうか。

温泉街を流れる支流に沿って柳が濡れている。テレビの旅番組そのままの光景。大正から昭和初期のような情緒的な雰囲気の建物がびっしり軒を並べている。飛び石連休の中日のせいか、観光客らしきおおぜいの人が傘をさしてぞろぞろ歩いている。みんなマスクをして。GO-TOさまさまか。

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車を降りて少し歩きたいと思ったが、駐車場がない。しかも渋滞。しかたがないので、そのまま通りすぎる。来たんだという記憶だけもらえればいい。

また、本流に沿って下るとすぐに河口だ。海に向けてぱっくり口を空けている。河口なのか湾なのか、海と川が一体になっている。地図では津居山湾となっている。

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港があり大きな漁船が3艘つながれている。カニ船団だろうか。四万十川でいえば下田港のような位置だが、はるかに大きな港だ。防波堤に立つと沖にカモメが飛んでいた。

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2011年7月、東北震災のあと、被災地視察に行った際、石巻市の大川小学校のすぐ下流の新北上川河口を見たが、あそこも追波湾といって、海と川が一体となっていた。よく似ている。

車は海岸の崖の上に沿ったくねくね道を西に進む。海が見えたり隠れたり。小さな湾の入り江に家が点在している。旧竹野町(現豊岡市)の役場があったところを過ぎ、香美町(旧香住町)に入ったところの交差点で海にお別れをし、内陸部を通る高速道路佐津ICに向かっていると、幸徳寺という道路標識が見えた。オッと思った。

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道をそれて矢印の方向に向かうとその寺はあった。誰かと話をしたかったが、人気がない。本堂前で手を合わせただけで辞した。

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すぐにネットで調べたところ、曹洞宗の禅寺であった。全国には、幸徳寺という名前の寺は、大阪府堺市と佐賀県鹿島市にもあることも知った。幸徳秋水とのつながりはないのだろうが、「幸」「徳」という名前はいかにもご利益がありそうで、お寺や神社にはふさわしい、いい名前だと思う。

高速に乗り、きょうの一番の目的地、4年前はパスをした湯村温泉をめざす。前回、高速は余部までで、そこで名物の旧鉄道橋を見たが、この日は高速も延長されていたので、そのまま進む。すぐに終点浜坂ICに着く。山側に左折し15分で湯村温泉に。

湯村温泉はTVドラマ夢千代日記の舞台。私の好きで尊敬する脚本家、早坂暁の3部作であり、名作であった。主演は吉永小百合。(映画にもなった。)

夢千代日記は、単なる鄙びた温泉の芸者の話ではない。夢千代は広島で胎内被曝をした被爆者であり、反核平和への熱い思いを込めた作品なのである。日本海のよどんだ暗い海と空は、作品のイメージにぴったりであった。その雰囲気を体感したかった。

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二つの谷川が合流する狭い谷間に宿が集中している。隠れ宿といった感じ。城崎温泉の色気と華やかさがある街並みとは違う。橋を降りたところにシンボルの荒湯があり、湯けむりがあがっている。向かいの山側には夢千代像があった。

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温泉に入るのが目的ではないので、土産物店をぶらぶらし、夢千代館に入る。
舞台セットなど、ドラマの世界が再現されていた。ビデオも流れていた。3人のメッセージも色紙に。

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早坂暁 「夢千代は淋しくとも愛の微笑に囲まれて」

深町幸男(演出家) 「長いトンネルをぬけると、鉄橋があった。走り抜けると山陰本線。低い山々の中の盆地の中央に夢千代日記の里があった。懐かしくて、暖い人の情けいっぱいの湯村温泉の人々。私は沢山のテレビドラマ、映画の地方ロケで、日本各地でロケーション撮影をやって来たが、私が心に残るロケ地は湯村温泉以外にない。今でも、私は感謝の気持ちで一杯である。ありがとう。」

吉永小百合 「夢千代はお母さんの胎内で被爆しました。私はその少し前、東京大空襲の三日あとで生まれました。戦争がなかったら、原爆が落とされなかったら、夢千代はお母さんと倖せに暮らしていたでしょう。核兵器のない、平和な世界をめざして行動することは私の願いです。」

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ここは明治22年、最初の村名が温泉村。その後、温泉町になり、いまは隣の浜坂町と合併して新温泉町。字名は「湯」である。

山側の国道9号に出て鳥取砂丘方面進む。雨も強くなり、暗くなってきたので、どこに泊まろうかと思案をした末、翌日の帰りのコースを考え、倉吉に決めた。倉吉は2年前2度来ているので、なじみのホテルへ。

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Author:田中全(ぜん)
高知県四万十市(旧中村市)在住。
幡多と中村が自慢のおんちゃん。
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