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新庄村

11月3日。家に帰る日。早めにホテルを出て、倉吉の名所、白壁土蔵の町並みを歩く。2年前も2度来ているから、土地勘はできている。行きたい店を選んで入る。玉川のせせらぎのひんやりした冷気が身を引き締めてくれる。

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倉吉が好きになったのは、山田太一の名作、NHKドラマ「鳥帰る」(1996年)の舞台になったから。田中好子、杉浦直樹、香川京子が出演。母子の愛憎を通して家族のこころの襞を描いた。今は亡きスーちゃんの代表作になった。

http://hatanakamura.blog.fc2.com/blog-entry-451.html

まっすぐ南に進む。関金温泉を通り、犬挟峠の長いトンネルを抜けたら岡山県の蒜山高原。紅葉真っ盛り。2年前も同じ時期来ているので、その時行かなかったジャージー牧場で一息入れる。

いつものとおり湯原から勝山へ抜けるつもりであったが、観光地図をみていると新庄村回りでもそう時間が変わらないことがわかった。

30代のころ岡山に転勤で3年いた時、県内ほとんどの所に行ったが、新庄村はまだであった。岡山県西北端、県で一番小さな村で「がいせん桜」があるということは知っていた。

初めての道を走り15分で着いた。途中、いつもと違う角度から大山を遠望できた。ススキと紅葉の先に。

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村の中心部といっても小さな集落で、「がいせん桜」はすぐにわかった。がいせん=凱旋で、1906年(明治39年)、日露戦争の勝利を祝って、出雲街道の宿場に植えたもの。通りに沿って137本の桜並木が5.5メートルの間隔で残っている。みんな背が低く、通り抜けのようになっている。

端から端まで300~400メートルくらいであろうか、歩く。春の花とは違い、柿色に染まった葉桜の見ごろで、情緒いっぱい。秋の桜の美しさを感じた。宿場の本陣や脇本陣の白壁の建物もあり、すばらしいコントラスト。

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黛まどかさんの句碑も建っていた。

 峡(かい)の日を のせて漂ふ 花筏(はないかだ)

観光交流プラザがあったので入って話を聞く。背が低いのは、道路端で人間の足で踏まれるため成長が抑えられたため。それでも枯れないのは、道の両側に水路が流れており、適度の水分が年中たもたれるため。その微妙なバランスで、100年を超える古木が生き続けてきた。もちろん、地元の人たちが村のシンボルとして大切に守ってきたことが一番大きい。桜とせせらぎの音は、「日本の音風景百選」にも選ばれている。

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村の人口は約800人という。私がいたころの真庭郡9町村は、2005年、新庄村を除いて合併し、真庭市になった。新庄村は早々と自立宣言をし、残った。立派である。

というのも、ものすごい歴史があるからだ。日本の近代地方自治制度ができたのは明治22年であるが、その前の明治5年、「自然村」ができた当時から、いまと同じ範囲の新庄村だった。だから、村には大字がない。各家の番地は新庄村○○番地なのだ。新庄村は日本の地方自治体の中で完全純血種なのだ。

誇るべき村。そんな村だから、凱旋桜も守られてきたのであろう。

奇しくもこの日は11月3日。戦後は文化の日(憲法公布日)であるが、戦前は明治天皇の誕生日であり、天長節とか明治節とか言われた。

桜並木沿いの家の玄関には日章旗を掲げているところが多かった。国民の祝日に日の丸を掲げる家は時々みかけるが、これだけ並んだのを見るのは初めて。

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凱旋桜があるのでこうした光景が続いているのであろうか。桜の苗木を植えた当時の様子が目に浮かんだ。大陸からの帰還兵が凱旋ラッパを先頭に行軍する。勇ましく、かっこいい。

しかし、日露戦争は「勝った」のではなく、「負けなかった」というのが真実。日本は戦争を続ける余力は残っていなかったので、アメリカに仲裁を頼んだ。(ポーツマス条約)賠償金もとれなかったので、あとで国民の不満が爆発した。(日比谷焼き討ち事件)

幸徳秋水は日露戦争に反対した。非戦論を唱えて。その結果、のちには大逆事件の首謀者に仕立て上げられ抹殺された。

凱旋桜はそんな日本の歴史の負のイメージも背負っている。しかし、この桜並木に価値があるのは、村民が100年以上にわたり、桜の物語を大切にし、営々と守り続けてきたこと。それが村のシンボルとなり、誇りとなったからこそ、幾多の町村合併の誘惑にも負けず、独立自尊を守り続けられているのだと思う。

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道の駅「がいせん桜新庄宿」で名物の「ひめのうどん」を食べてから、勝山に下った。紅葉に包まれた30分の快適な道であった。

勝山(真庭市)では、いつもの辻酒造西蔵に寄る。風情ある「のれんの町」を少し歩く。4時、落合ICから高速に乗り、家に着いたのは10時であった。

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Author:田中全(ぜん)
高知県四万十市(旧中村市)在住。
幡多と中村が自慢のおんちゃん。
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