安倍夜郎(2)

 安倍夜郎から「広報四万十」(2011年12月)に寄稿してもらった、市民へのメッセージを紹介します。

                    出身は中村です

  断っておくが、ボクは「四万十市」というのに何の愛着も持っていない。むしろ勝手に本籍を変えられたことに未だ納得していない。だから、出身を尋ねられると、「高知県の中村です」と答えることにしている。なにしろボクは、中村幼稚園に年中組で入って以来、中村小学校(なかしょう)、中村中学校(なかちゅう)、中村高校(なかこう)に通った生粋の中村人なのだから、今さら言われてもこまるのである。

という訳で、ボクは年に二、三度、四万十市ではなく中村に帰省する。毎年、盆暮れの帰省前になると東京の自宅に、いつ帰って来るかと中村の友人達から電話が入る。帰ってからの飲み会の誘いで、帰省すると東京にいるときの何倍も忙しい日々が待っている。漫画が売れない頃は、高知まで深夜バスで帰って来てたが、この頃は飛行機だ。汽車が後川の鉄橋を渡ると、ああ、帰って来たなと思う。言葉もすぐ幡多弁に戻る。

帰って来ていつも思うのは、なんちゃあないけんどやっぱり中村はええ町やということである。なんちゃあないというのは、当り前のようにそこにあるから特別思わないだけで、ホントは山があって川があって海があって、キレイな空があって旨いもんがある。それから、ずっと中村におったらわからんろうけんど、どしたち水がええ。沸かした風呂の水が違う。とても柔かくてやさしくて気持ちええ。飯を炊いてもうまいし、その上に青のりをかけたら、もう何も言うことはない。本当に四万十川のお蔭やと思う。

でも、あんまり何でもかんでも「四万十、四万十」いうがはようないと思う。かえって恥しい。県外用、観光用みたいな感じで妙にいかん。しつこいようなけんど、「四万十市」いうがもそれと同じもんを感じる。

「四万十」というブランドを育てようと思うたら、実のある本当にええ商品を作らんといかん。とりあえず「四万十」と付けただけの何の工夫もない目先だけの物を作っても、一回は売れても二度と買うてくれん。地元の人も認めるしっかりした物づくりをしたら、自信を持って「四万十のがはエエぜ」と余所の人にも紹介できる。そうして、初めて「四万十市」を応援できるようになるとボクは思っている。

「広報四万十」(2011年12月)30ページ http://www.city.shimanto.lg.jp/gyosei/pdf/h23/kouhou12.pdf

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プロフィール

Author:田中全(ぜん)
高知県四万十市在住。
幡多と中村が自慢のおんちゃん。

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