FC2ブログ

ノボリコ

四万十川の冬の風物詩にシラスウナギ漁がある。海からのぼってくるシラスを夜、岸辺や舟の上から灯りを川面に照らしておびき寄せて網ですくいあげる。

シラスウナギは養鰻業者に高価で買い取られるため、1キログラムあたり高い年には何十万円もの値が付く。だから白いダイヤともいわれる。

この時期、夜になると私の家の前から河口にかけては、川が灯りで染まる。海の漁火漁よりも赤々としている。地元では「四万十川の冬花火」というタイトルの演歌がつくられた。

私の実家には川舟がある。このあたりの農家はたいていもっている。アオノリ漁のためだ。しかし、最近はアオノリが採れない。だから、シラスウナギ漁に期待が大きい。

https://www.youtube.com/watch?v=_dZDXO_W6zU



私はどちらの漁もしたことはないが、母はいつも舟を出していた。冬の寒い夜もシラスをとるために。寒い夜ほどよくとれるからだ。

母は灯りに向かってチョロチョロと近寄ってくるノボリコがかわいくて仕方がないと言っていた。ここらではシラスウナギのことをノボリコと言った。

母は働き者であった。田んぼをつくり、畑を耕し、冬にはアオノリとシラスをとった。

母がつくった川柳にこんなのがある。

空の碧四万十の碧海苔を掻く
海苔洗うはずんだ声の舟溜まり

母にとってアオノリやシラス漁は、田畑の仕事と違い、楽しかったようだ。元手がいらず、川に落ちているお金を拾うようなものだからだ。

しかし、冬の川に入ることは体にこたえた。母の体は70代に入ってから急速におかしくなった。無理を重ねた足腰がにぶくなり、さらに脳梗塞をおこし、程なく寝たきりになった。そして2007年、79歳で亡くなった。せめて80歳までは生きてほしかったのに。

毎年冬になり、四万十川の冬花火を見るたびに、母が言っていた「チョロチョロ近寄ってくるノボリコがかわいくて仕方がない」を思い出す。

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

Author:田中全(ぜん)
高知県四万十市(旧中村市)在住。
幡多と中村が自慢のおんちゃん。
フェイスブック(FB)もしています。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR