高山と飛騨

 先月末、はじめて飛騨を訪ねた。高山市内、白川郷、古川などの名所を回ったことは、4月29日付で書いたので、きょうは別のことを書いておきたい。

飛騨に一度は行ってみたかったのは、中心地の高山が小京都と呼ばれ、わが中村と似た歴史をもっていると、思っていたからだ。

「戦国三国司」という言葉がある。戦国時代、京都の公家が国司となって地方に出向き(下向)、実際に在地支配を行ない、戦国大名になっためずらしい例として、飛騨の姉小路家、伊勢の北畠家、中村の一條家があげられる。高山の町が小京都と呼ばれるのは、こうした歴史によるものとこれまで思っていた。

しかし、間違っていた。まず、場所が違っていたのだ。

姉小路家が国府を置いたところは、いまの高山ではなく、その北部の山間地である、その名も国府町(高山と古川の中間)であった。しかも、姉小路家の飛騨支配は安定せず、コロコロと領主が交代、最終的に平地である高山に城を築いたのは豊臣秀吉の家臣金森氏であった。いまの高山中心部の町並みの基礎を築いたのは金森氏であり、徳川政権前期まで続く。その後飛騨は幕府直轄の天領となり、高山に陣屋(代官所)がおかれる。

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だから、高山の町並みと姉小路家とは、直接の関係はないのだ。しかも、姉小路家は公家のランクでは中級。飛騨に下向したのも嫡流(本家筋)ではない。最上級ランクの五摂家(摂関家)であった一條家の当主教房(前関白)本人が下向した中村とは意味合いが違う。格が違うのだ。

伊勢の北畠家も飛騨と似たようなもの。伊勢の国府は現美杉村にあったとされるが、町並みといわれるほどのものは残っていないそうだ。そもそも伊勢には小京都といわれる町はない。

わが中村が「公家的小京都」(武家的ではない)の唯一の例とされるのはこのためだ。しかも、土佐一條家5代(教房を含む)約100年は、それなりに安定した統治であった。城ではなく御所に居を構え、「御所様」と言われたぐらいである。こんな違いは、現地の飛騨に来てこそ、初めて実感できる。

しかし、このことと、例えば現在の観光地として、どちらが有名で、たくさんのお客さんを迎えているかということは、別である。
 
高山はいまや国際的な観光都市。日本の原風景とされている。春の高山祭が終わったばかりであったが、外国人であふれていた。伝統的町並みを保存・統一し、観光に力を入れてきた取り組みが、いま花開いている。

それに比べて中村はどうか。中村に来るのは、四万十川目あての観光客ばかり。「公家的小京都」を活かしきれていない。これは、私の反省でもある。

 ところで、飛騨に来て、もう一つ、身につまされることがあった。平成の大合併の功罪の「罪」ある。

「飛騨」といえば地域の総称。いまの岐阜県は飛騨と美濃に分かれている。高知県でいえば、飛騨は幡多、高山は中村と同じ関係になる。この飛騨が合併で揺れた。

合併前、飛騨には15市町村(1市、4町、10村)あった。最初に、これを誰もが認める中心地高山市を軸に一つにまとめる構想があった。しかし、まず独自ブランドをもつ白川村が抜けた。次に、残る14も、高山市中心の南部10と、古川町中心の北部4に割れた。

そこで、まぎらわしかったのが新2市の名称。

10グループ側(国府町もこちら)は高山市への編入合併という形をとったこともあり、「高山市」の名をそのまま残した。いまや観光地高山は国際ブランドでもあるから、当然であろう。片や、4グループ側は「飛騨市」とした。

これに気に入らなかったのが高山市側。高山は「飛騨の高山」で通っている。高山あってこその飛騨だというプライドがある。だから、飛騨市の名前を隣がつけることは、分家が本家を乗っ取るようなものだ、といろいろ注文をつけた。潔くないと言えばそうだが、その気持ちはわかる。しかし、法的にはどうしようもなく、飛騨地方は、高山市(人口9万人)と飛騨市(同3万人弱)の、面積だけは広大な2市に分断された。「高山は飛騨ではあるが飛騨市ではない」というのもわかりづらい。政府が強引な合併誘導をしなければ、こんなことにはならなかったろうに。
ちなみに、新・高山市の面積は日本一で、大阪府、香川県よりも広く、東京都とほぼ同じ。

この経過をわが身におきかえ、幡多を例に、同じように想定すれば、中村グループは中村市を残したのに、仮にその他の大きなグループがあったとして、幡多市を名乗るようなもの。しかし、中村市はたった1市1村の合併だったのに、中村の名を残さなかった。私はそれが残念でならない。

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(高山市役所と飛騨市役所)

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プロフィール

Author:田中全(ぜん)
高知県四万十市在住。
幡多と中村が自慢のおんちゃん。
幸徳秋水を顕彰する会事務局長。
FB(フェイスブック)もやっています。

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