美味しんぼ

 鰹のタタキはうまいが、漫画「美味しんぼ」タタキはいただけない。

 この漫画は以前、それこそ、中村名物の元祖・鰹の塩タタキを紹介してくれたことがある。その店(割烹わかまつ)を私はよく利用していることもあり、漫画には親近感をもってきた。塩タタキを中村の看板にしようと、いま商工会議所もさかんPRしている。

「美味しんぼ」は全国各地の食材や料理を丁寧に取材している。単なるグルメ漫画というよりも、地域それぞれの食文化を紹介することで、中央(東京)に画一化されがちな価値観に抗い、日本文化の多様性を発掘し、発信するという重要な役割を果たしている。決して、興味本位のコミックではない。

この漫画のこうした、これまでの実績と内容をみれば、今回の「福島の真実」編も原発問題にまじめに向き合い、しっかりとした取材に基づくものであることがわかる。私は最後の2話(23,24)を書店に注文し、読んだ。24話には、今回の「騒ぎ」についての、編集部の見解のほか、関係者、「識者」16人の意見も載っていた。

問題になったのは鼻血。
前双葉町長の井戸川克隆さんの話を紹介した場面。
この鼻血が原発事故に結び付くのか?

 実は、私は4月26日、井戸川さんにお会いしたばかり。小田原市で開かれた「脱原発をめざす首長会議」総会で。私は直接、話をきいた。その朝は鼻だけでなく、喉からも血が出たと、しんどそうだった。顔色も悪かった。
「私は被ばくしています」。

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 井戸川さんは、国の事故処理に非協力であるとして「身内」であるはずの町議会から解任(不信任)された。全町避難を指揮したあとも埼玉県加須市に住んでいる。「私たちは“ふるさと”の歌がキライ。歌いたくとも歌えない。」国に見捨てられた・・・全身、怒であった。

いま国は全国の原発周辺自治体に避難計画の策定を進めているが、井戸川さんらが痛感したのは、受け入れ側に「受け入れ計画」がないこと。また、「帰還計画」とセットになってこそ意味がある。しかし、国にはいずれの視点もないというか、もともと実効のある避難計画をつくること自体が不可能なのだ。いま災害救助法を適用しているが、最低、原発からの避難を呼びかける特別な法律の制定が必要だ。いまのような状況では、原発の再稼働はありえない。なのに、国は再稼働に前のめり、になっている。

 そこで鼻血問題。
井戸川さんは、自らのFB(フェイスブック)に自分の鼻血写真をアップしている。

原発事故直後、福島県から幼い子ども2人を連れて本市に避難をしてきた女性も、FBで子どもたちの鼻血のことを紹介し、これが現実であり、「風評被害」ではなく、福島の「実害」に目を向けてほしいと訴えている。

鼻血と被ばくの因果関係は、「識者」が両論書いている。放射能の濃度、個人差いろいろあるだろう。この問題に正解はないのだ。はっきりしていることは、鼻血を出している人がいるという「事実」。それが被ばくの影響であると疑われること。これで、十分であると思う。

 この事実を漫画に書いて、なんで大騒ぎになるのだろう。
「美味しんぼ」を高く評価したうえで、あえて言わせてもらえれば、たかが漫画、である。

なのに、このバッシング。
政府の官房長官までが遺憾コメントを出している。
私はこのことこそ、異常であると思う。

「風評被害」・・・いかにも福島県民に寄り添うような美名を隠れ蓑にして、実害には目をそらし、避難者を放置したまま。国は、原発再稼働のためには、早くフクシマを忘れさせたいのだ。だから敏感になっている。

テレビや新聞でも、最近は原発避難者の報道は見られなくなった。汚染水処理もめどがつかないままなのに、報道が少ない。復興に向けて努力する県民と、その激励のために毎月訪問する安倍首相・・・これが中心だ。

特定秘密保護法反対ではあれだけがんばった地元・高知新聞までもが及び腰。これこそ報道の自主規制。マスコミ、報道機関には、これを自らの問題としてしっかり受け止めてほしい。

このままフクシマが消されてしまいそうで、おそろしい。

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プロフィール

Author:田中全(ぜん)
高知県四万十市在住。
幡多と中村が自慢のおんちゃん。

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